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胃がんリスクフォーラム報告④~行政とともに医師会が取り組むべき胃がん対策

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2015年09月10日

 

胃がんリスクフォーラム報告④~行政とともに医師会が取り組むべき胃がん対策

行政とともに医師会が取り組むべき胃がん対策

京都府医師会消化器がん検診委員会
京都第二赤十字病院健診部      

小林正夫

小林先生

2013年2月にヘリコバクターピロリ(以下Hp)の感染診断及び除菌治療が保険適用となり、胃がんを取り巻く状況が転換期を迎えている。また胃がん検診ではないものの血液による簡便な胃がんリスク評価として、胃がんリスク検診(ABC検診)が広がりつつあり、2014年11月に「胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル第2版」が上梓された。2015年3月31日の「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」では、内視鏡検診が胃X線検査と同等の証拠のレベル2+、対策型検診としての実施を推奨する(推奨グレードB)とされるなど、検診に対する考え方が変わりつつある。さらに内視鏡分野ではピロリ菌感染診断のために「胃炎の京都分類」が出版されるなど、今後、胃がん対策は胃がんを見つける検診のみならず胃がんを予知・予防することが求められる。
こういった状況を踏まえ、京都府医師会消化器がん検診委員会では「Hp感染を考慮した胃がん検診のあり方を検討する小委員会」を起ち上げ、検診のあり方だけでなく、広くHpを考慮した胃がん対策を検討し、「行政とともに医師会が取り組むべき胃がん対策」として提言書をまとめた。

その内容は、まず提言書作成に至った経緯と京都府医師会の立場を明らかにし、自治体の保健医療福祉施策の方向性を示した。
小林先生_医師会の立場
小林先生_自治体の方向性
また、胃がんの統計学的背景から、毎年5万人がなくなる胃がん死亡者には高齢者が多く、今後は働き盛りの世代の胃がん死亡予防に重点がおかれるべきと考えられた。現在の胃がん検診の現状と課題として、胃X線検診は、低い受診率、受診者の固定化、無視できない偶発症、読影医不足、マネージメントの視点の欠如、評価の視点の欠如など問題点が多く、一方、内視鏡検診においても、導入すれば受診率が上昇し胃がん発見率も向上するが、検査件数の限界、検査の偽陰性や精度管理の問題、偶発症などの問題を有している。今後、胃がん検診にはハイリスク者を同定しリスクに応じた検診が必要であると考えられるが、ABC検診も偽A群の問題、低い精検受診率、精度管理などの課題を抱えている。提言書では先行自治体・施設で行われているABC検診を事例として挙げ、課題の克服に努めている。現行の胃X線検診については、今後のあり方としてHp感染を考慮した新しい考え方に基づく胃がん検診システムの構築が必要であり、対策型検診として推奨グレードBとなった内視鏡検診の導入にあたっては、地域の通常医療の容量、インフォームドコンセント、精度管理、事後のフォローアップ体制などの検討が必要である。

まとめとして、今後の胃がん対策は、一次予防として、①モデル事業として行う若年者のHp除菌、②成人におけるHp除菌、③生活習慣の改善について、それぞれ科学的評価や除菌後の胃がん発生についての啓発などが必要であり、二次予防としては、内視鏡検診の導入、内視鏡検診と胃X線検診の併用、胃X線検診の継続など、今後考えられる胃がん検診は、地域の医療資源の事情に応じて検診方法を選択すべきと提言している。
小林先生_まとめ

なお提言内容の詳細は、京都府医師会ホームページに委員会報告として掲載されているので、参照されたい。
http://www.kyoto.med.or.jp/member/committees_report/pdf/tiiki-iryou-bu/igantaisaku-2015.pdf

本件に関する問い合わせ先

〒108-0072 東京都港区白金1-17-2 白金タワーテラス棟609号
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構
理事長 三木一正
TEL:03-3448-1077 FAX:03-3448-1078
E-Mail:info@gastro-health-now.org

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