近年、AI(人工知能)を活用した画像診断支援機器(以下、AI診断)は医療現場において急速に普及しつつある。当院では2023年に富士フイルム社製CADEYEを導入しての上部・下部消化管内視鏡検査AI診断に加え、胸部X線検査・乳腺超音波検査にも前社製のAI診断機器を導入している。
さらに、院内の人間ドックおよび各種検診にとどまらず、事業所健診に用いる胸部レントゲンデジタル撮影検診車および経鼻内視鏡専用検診車にもAI診断機器を搭載し、実際的な運用を行っている。
AI診断は検査中にリアルタイムで病変検出および鑑別支援を行うものであり、がんの早期発見に寄与する技術として注目されている。また、検査医の補助診断として精度向上および読影の均質化、さらには検査効率の向上に資する点において、臨床的有用性が高いと考えられる。
(AI内視鏡)
上部消化管内視鏡スクリーニング検査において、ESD適応となる早期胃がんの検出には高度な診断能力が求められる。特に、ヘリコバクター・ピロリ菌感染後あるいは除菌後に認められる腸上皮化生を伴う高度萎縮粘膜では、粘膜構造の不整により病変の識別が困難となる。当院で行った経鼻内視鏡スクリーニング検査からの早期胃がんの検出にAI内視鏡が有用であった症例を提示する。CAD EYEは白色光観察において視認困難な病変に対しても、異常所見の範囲を検出ボックスとしてリアルタイムに提示し、検査医に対する注意喚起を行う。ピロリ菌除菌後の高度萎縮粘膜を背景とした早期胃がん(ESD適応病変) おいて、その有用性が示唆された。本システムの診断性能は、多数の症例からのがんなどの異常所見・画像を用いたディープラーニングに基づく画像解析技術によるものである。また、LCI(Linked Color Imaging)等の画像強調観察や色素散布(インジゴカルミン)を併用することで、診断精度のさらなる向上が認められた。さらに、画像強調観察であるBLI(Blue Light Imaging)とAI診断の併用が、早期食道がんの診断においても高い有用性を示した。
当院では2008年に導入した経鼻内視鏡専用検診車にも、2024年よりAI内視鏡を搭載し運用している。受診者アンケートでは、AI内視鏡の将来的普及に対する期待が高いことが示された。
(AI大腸内視鏡)
CAD EYEに搭載された大腸内視鏡用ソフトウェア(EW10-EC02)は、検査中に腫瘍性病変の検出支援を行うとともに、BLI観察を用いた鑑別支援機能により、ポリープの腫瘍性・非腫瘍性をリアルタイムで鑑別診断し結果を提示する。本機能は、小型腫瘍に対するEMR適応判断の一助となる可能性がある。
(AI胸部X線)
2024年に導入した富士フイルム社製CXR-AIDは、胸部単純X線画像(正面像)を自動解析し、結節影、腫瘤影、浸潤影、気胸等の異常陰影を検出・マーキングする(2026年3月現在、無気肺、石灰化、瘢痕、胸水、free air、心拡大、縦隔拡大を含む計10所見に対応)。さらに、異常所見の確信度をヒートマップ表示および数値化する機能を有し、診断補助として有用である。これらの解析結果を診療放射線技師および放射線科専門医による二重確認を経て、見落とし防止に寄与している。異常所見が疑われる場合には、速やかに受診者へ説明を行い(人間ドック受診の場合は同日の結果説明の際)、必要に応じて同日の胸部CT検査を推奨している。
(AI乳腺超音波)
2025年に当院に導入した富士フイルム社製ARIETTA 750 Deep Insightでは、乳腺超音波検査におけるAI画像認識技術により、Bモード画像上で輝度特性の異なる領域を強調表示し腫瘍性病変の検出をリアルタイムに支援する。
AI診断は、検診・人間ドック領域を含む予防医療において、診断精度の向上および見落としの低減に寄与する。これにより、がん等の疾患の早期発見および早期治療に資する可能性がある。今後は、さらなる技術的進展と臨床データの蓄積を通じて、その有用性が一層明確化されることが期待される。