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機関紙(Gastro-Health Now)

第102号 ピロリ菌検診を実施する最適な年齢とは
北里大学大学院 医療系研究科 小和田 暁子

本文より … 世界のHelicobacter pylori(ピロリ菌)の感染率は、1990年以前の53%から2015年-2022年には44%まで減少してきました。しかし、日本は、依然としてピロ菌の感染率が高い国の一つです。ピロリ菌の感染率は、その人が生まれた年によって決まり、生まれてから5年以内に感染するといわれています。ピロリ菌に感染した子どもは通常無症状であり、消化性潰瘍疾患や胃がんに罹患することは稀です。ピロリ菌陽性者は、ピロリ菌を除菌することにより、胃粘膜の慢性胃炎や萎縮性変化を止めて、胃がんを予防することができ、除菌成功後のピロリ菌の再発や再感染は非常に稀です。これまでに、ピロリ菌は、胃がんをはじめ、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、機能性ディスペプシア、特発性血小板減少性紫斑病、胃ポリープを惹き起こすことがよく知られていましたが、近年、大腸がん、糖尿病、動脈硬化やMetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease(MASLD)などとも関連があるという報告が出ています。このことから、ピロリ菌を除菌治療する重要性は、胃がん予防にとどまらず、ますます拡がってくるものと思われます。これまで、私は、モデルを用いた費用効果分析の研究により、胃がんの一次予防である除菌を伴ったピロリ菌検診(50歳以上では除菌後のフォローの内視鏡検査を実施)は、大幅な医療費の削減と胃がん罹患数・胃がん死亡数の減少をもたらし、現行の内視鏡による胃がん検診よりも優れていることを明らかにしてきました。海外の研究からも、ピロリ菌検診の優位性が多数報告されています。この7月に、中国から、11.8年間に及ぶ約18万人を対象としたピロリ菌除菌治療のクラスター無作為化比較試験の結果発表があり、ピロリ菌除菌治療により胃がん罹患数が減少したことを報告しています。しかし、これまで、ピロリ菌検査・除菌治療をいったい何歳の時に実施すれば、最小の費用で最大の効果が得られるかについてはわかっていませんでした。そこで、2024年8月、Helicobacter誌上に「Cost-Effectiveness of Population-Based Helicobacter pylori Screening With Eradication for Optimal Age of Implementation」の中で、費用対効果からみたピロリ菌検診を実施する最適な年齢について発表しました。 ピロリ菌検診は、若い年齢で実施するほど費用対効果が高くなる:方法は、15歳の人を対象に、コホート状態遷移モデルを構築し、13の戦略(①15歳時にピロリ菌検診を実施、②18歳時にピロリ菌検診を実施、③20歳時にピロリ菌検診を実施、④30歳時にピロリ菌検診を実施、⑤40歳時にピロリ菌検診を実施、⑥50歳時にピロリ菌検診を実施、⑦60歳時にピロリ菌検診を実施、⑧70歳時にピロリ菌検診を実施、⑨80歳時にピロリ菌検診を実施、⑩毎年の内視鏡検査を実施、⑪2年に1回の内視鏡検査を実施、⑫3年に1回の内視鏡検査を実施、⑬検診を実施しない)について比較検討しました。医療費支払者の立場から生涯にわたる期間について分析し、評価指標は、費用・質調整生存年数(quality-adjusted life-years; QALYs)・生存年数(life expectancy life-years; LYs)、増分費用効果比(incremental cost-effectiveness ratios; ICERs)・胃がん罹患数・ステージⅠの胃がん罹患数、胃がん死亡数としました。分析するサイクルの長さは1年とし、すべての費用とユーティリティの割引率は3%としました。結果の確からしさを検証するために、一元感度分析、二元感度分析、確率的感度分析を実施しました。マルコフコホート分析を追加実施することにより、各戦略について、生涯にわたって蓄積された胃がん罹患数と胃がん死亡数を求めました。ベースケース分析の結果では、15歳時に実施するピロリ菌検診が、他年齢時に実施するピロリ菌検診、内視鏡検診や検診を実施しない場合と比較して、費用が最も小さく、QALYsとLYsがともに最も大きいことがわかりました。確率的感度分析をみた費用対効果受容曲線では、支払い意思額が5万ドル/QALY gainedにおいて、15歳時に実施したピロリ菌検診の費用対効果が高くなる確率が99.6%となり、この結果が強固であることがわかりました。2022年から2037年にかけての15歳の人口である1560万人に対して、15歳時に実施したピロリ菌検診では、検診を実施しない場合や2年に1回の内視鏡検診と比較して、それぞれ、970万ドルと23.9億ドルを節約し、126万QALYsを増加させ、436人の胃がん罹患(ステージⅠ胃がん発生では254人と305人)を予防し、176人と72人の胃がん死亡を回避できることがわかりました。 国の胃がん政策に、一刻も早く胃がんの一次予防であるピロリ菌検診の導入を:15歳から80歳時に実施するいずれのピロリ菌検診も、内視鏡検診と比較して優れており、15歳から80歳時に実施するピロリ菌検診のうちで、費用対効果の最も高い年齢は、最も若い15歳です。今こそ、現行の胃がん検診を一刻も早く見直し、より若い年齢にシフトしたピロリ菌検診を導入することが強く求められているのです。

第101号 佐賀県における世代別の胃がん対策
佐賀大学医学部小児科/未来へ向けた胃がん対策推進事業センター 垣内 俊彦

本文より … 佐賀県は2014年の胃がん年齢調整死亡率が全国で2番目に高く、その他のがんも含めたがん対策が喫緊の課題でした。2012年、佐賀県と佐賀大学が連携して肝がん対策が始まり、2018年には肝がん粗死亡率19年連続ワースト1位を返上するに至りました。その中で、胃がんに関しても、従来の公的胃がん検診に加えて、発症予防も見据えた胃がん検診・対策が開始されました。
世代別の胃がん対策:1. 小児未成年期(中学生〜20歳) 2016年度より県内全ての中学3年生を対象に、公費によるピロリ菌検査と除菌治療をおこなう若年者ピロリ菌検診を開始しました。この取り組みはピロリ菌感染からの期間が短く胃のダメージが少ないこの時期に、ピロリ菌除菌をおこない胃がん発症自体を予防するものです。全県下での公費(全て無料)での実施は全国初であり、高い注目を集めています。胃がん撲滅を目指す取り組みのゲートウエイであり、県の事業として半永久的に継続される面と、将来を見据えたコホート研究の側面をも持ち合わせています。…検査はあくまでも任意ですが、本人の同意が得られた中学3年生を対象に、毎年春に実施される学校検尿の残尿を用いて尿中抗体検査を実施します。陽性と判定された場合は便中ピロリ抗原検査で二次検査を行い、尿、便検査ともに陽性の場合には除菌の対象となります。除菌は、小児への上部消化管内視鏡検査の侵襲性の高さと、この世代での胃がん発症がほぼないことから、内視鏡検査なしでおこなわれます。現在まで、対象の生徒数58,281名のうち51,794名(88.9%)が検診に参加し、尿中抗体陽性率は4.1%で、最終的なピロリ菌感染率は2.3%の結果です。初年度の検診参加率は78.5%、感染率は3.6%、今ではそれぞれ94.3%、1.8%となっています。参加率は広報活動等の効果で増加し、感染率は、理由は不明ですが半減しています。2. 若年成人期(20歳〜40歳) 公的胃がん検診非対象世代に対して、ピロリ菌検査に対する費用補助を各市町単位の事業として実施しています。県内の20市町のうち、9市町で血清抗体検査、4市町で胃がんリスク層別化検診(ABC検診)が、自己負担金無料から1,320円の範囲で実施されています。この世代での胃がん発症は低率ですが、ピロリ菌除菌による胃がん発症予防効果が高く、ピロリ菌現(既)感染者を非感染者と選別し、感染者には保険診療によるピロリ菌除菌や定期的な上部消化管内視鏡検査受診を促し胃がん予防・早期発見に繋がるようにしています。3. 中高年期(40歳〜65歳) 胃がんの早期発見目的に、従来の上部消化管X線検査に加え、佐賀県では2017年から県単位の対策型内視鏡胃がん検診が導入されました。県および県医師会が中心となって運営委員会と読影委員会が設置されました。県独自のマニュアルが整備され、施行医は日本消化器病学会・内視鏡学会専門医と運営委員会による認定医に限定され、ダブルチェックは内視鏡学会専門医が担っています。対象者は初年度の2017年度は50歳以上60歳未満偶数年、2018年度以降は70歳未満まで拡大されています。現在では、佐賀県内全ての市町で実施されており、県内に住民票を有する方であれば県内85医療機関で受検可能(広域化)となっています。2021年度の胃内視鏡検診の結果(内はX線)は、受診者数1,029(15,141)名、要精検率3.9(7.0)%、精検受診率82.5(87.5)%、がん発見者は2(22)名で発見率0.2(0.1)%の結果でした。
今後の課題…若年者ピロリ検診の一次予防から公的胃がん検診までの狭間世代まで含めて、シームレスな胃がん対策が実施されるに至っています。県をあげてのこのような取り組みは、全国的にみても珍しく、先進的と思われます。一方で、小児期に感染が判明した者、小児期に除菌した者のフォローアップ体制の構築はこれから議論していかなければなりません。小児期除菌の胃がん予防効果確認、安全性を長期的にフォローしていく必要性について、特に我々佐賀県は責務を自覚して実行していかなければなりません。また、小児未成年期にピロリ感染検査の機会が創設されたことで、若年成人期のピロリ菌検査および中高年期の胃がん検診のあり方を変容していく必要があることは明白です。現状の胃がん検診システムを今のまま継続していくことは、医学的にも医療経済的にも非効率であることも明らかであり、我々はシステムのブラッシュアップに向けた研究・取り組みを現在検討しています。
まとめ:胃がん対策は、既存の検診も含めて大きな変革期を迎えています。若年者のピロリ菌感染率が著明に低下してきているなかで、「胃がんにならないのが当たり前の日本」となる前に、「佐賀県出身者は胃がんにならない」を目指して、佐賀から胃がん予防における令和維新を目指したいと考えています。

第100号 十二指腸非乳頭部腫瘍に対する内視鏡治療
慶應義塾大学医学部腫瘍センター 矢作 直久

本文より … 十二指腸腫瘍は近年その発見頻度が増加しておりますが、その絶対数は極めて少なく、罹患率は全消化管腫瘍の数%にすぎません。特にその中でも癌になるものは少なく、十二指腸癌は希少癌に分類されています。2021年に外科系の学会が中心となり十二指腸癌診療ガイドラインが刊行されましたが、内視鏡手技に関するデータは限定的であり未だに治療法が確立されていないのが現状です。しかし、外科治療が必要となった場合には膵頭部十二指腸切除という極めて侵襲の大きい治療になってしまうことから、早い段階で内視鏡治療を行うことの重要性が再認識されております。一方で、十二指腸における内視鏡治療は、大腸とは異なり局注してもキルクリング襞に沿って局注液が拡散してしまい良好な隆起が得られないことや、消化管の屈曲のため操作性が悪いこと、筋層が極めて薄く穿孔し易いこと、膵液などの消化液の存在により出血や穿孔をきたし易いことから、治療の難易度や偶発症のリスクが極めて高く普及の妨げになっていました。しかし十二指腸腫瘍の特性に合わせて、病変のサイズや粘液形質などを加味して治療戦略を立てることにより、十二指腸においても許容できる治療成績を挙げられる様になってきております。これまでに蓄積した我々の多数例の検討により、脂肪の沈着と考えられるWOS(white opaque substance)(注1)が陽性かつ13mm未満の腫瘍は、ほとんどが低異型度腸型腺腫であることが判明しており、これらの病変に関しては一次医療機関においてもCFP(注2)やCSP(注3)での対応が可能と思われます。一方、WOS陰性あるいは13mm以上の腫瘍においては悪性化のリスクがあるため、CSPではなく粘膜下層も含めて確実に取れる手技での治療が望ましいと思われます。一般的に、20mm程度までの病変であればEMRもしくはUEMRで対処可能ですが、屈曲部などの難しい病変の場合は、部分局注を追加したPI-UEMR(注5)での治療が望ましいと思われます。しかし、20mmを超える病変に関してはスネアを用いる手技では不完全切除となる可能性が高いため、ESDやD-LECS(注6)での治療が必要となります。十二指腸ESDに関しては、十二指腸病変の見た目が大腸LSTに類似しているものが多いため、大腸ESDと同様のものと勘違いしている方がおられますが、十二指腸ESDは全く別次元の治療になります。我々は十二指腸ESDをより安全・確実に実施するためにWater pressure method(注7)を、また大型の切除創を確実に縫縮するためのString clip suturing method(注8)を開発し、従来は不可能だと思われていた大型の病変でも問題なく治療ができるようになりました。しかし、治療手技そのものも術後管理も全く大腸ESDとは異なり、スムースにESDを終えたとしても重篤な遅発性偶発症が起こりえるため、きちんとそれを認識して胆膵内視鏡医や胆膵外科医のバックアップ体制が得られる施設でのみやるべき治療手技と考えられます。またD-LECSに関しても同様で、習熟した外科医がいない状況では決してやるべきではなく、またD-LECSで治療可能な病変は、習熟した内視鏡医であれば問題なく内視鏡単独での切除・縫縮および術後管理が可能であるため、適切に適応を見極め自施設のみでの治療にこだわらず、ハイボリュームセンターへの紹介も含めてベストな選択肢を患者さんに提供すべきと考えられます。幸い発見される多くの病変は小型の腺腫であるため、確実に診断ができれば一次医療機関でもリスクの低いCSPでの治療が可能と思われます。しかし通電が必要になるEMRやUEMRは偶発症のリスクが高くなるため、胆膵チームや外科チームが揃っている地域中核医療機関で実施すべきものと考えられます。一方で、ESDやD-LECSが必要となる大型病変は、絶対数も限られているため不用意に手を出さずに、十分な経験を持つ先進医療機関に症例を集約すべきものと思われます。
<編者注釈> 注1)WOS(white opaque substance)…白色不透明物質
注2)CFP …Cold forceps polypectomy、生検鉗子等の内視鏡鉗子を用いた摘除法。
注3)CSP …Cold sunare polypectomy、高周波装置を使わずにスネア(鉗子)で機械的に粘膜を切除する方法。
注4)UEMR …underwater EMR、浸水下で病変の内視鏡的切除法。
注5)PI-UEMR …UEMR combining partial submucosal injection
(著者論文「Dig Endosc. 2022 Mar;34(3):535-542. Yusaku Takatori, et al.」より)
注6)D-LECS …Laparoscopic and endoscopic cooperative surgery for duodenal tumors; D-LECS、十二指腸腫瘍に対する腹腔鏡・内視鏡合同手術のこと。
注7)Water pressure method …浸水下で内視鏡の送水機能を用いて、水の圧力と浮力で粘膜下層を展開し、粘膜フラップの作成と粘膜下層への潜り込みを行う手技のこと。WPM。
注8)String clip suturing method …クリップ縫縮術のこと。(GHN100号本文図参照)

第99号 ”AI内視鏡”が胃がん検診にもたらすメリット~検診・ドックなど、検診センターにての有用性~
医療法人社団聡誠会 理事長 池田病院・健康管理センター 院長 池田 聡

本文より … 池田病院附属健康管理センターでは、年間1万件の院内検診、年間5,000件の人間ドックなどを行っている。上部消化管検査はスクリーニング目的の経鼻内視鏡が中心で、昨年(2023年)には9,900件実施した。一方、同センターでの内視鏡検査医師は、非常勤も合わせ1 〜2人/日。検査医は1日当たり30〜50件の内視鏡検査を実施しており、大変負担が大きい。そこで2023年、富士フイルム社製内視鏡 AI 画像診断支援技術 “CAD EYE”を導入し、胃がん・食道がんの早期発見のために活用している。“CAD EYE”が搭載する機能の1つに、「ランドマークフォトチェッカー」がある。食道胃接合部・噴門部・胃角などが撮影されるとモニター画面のランドマークマップに印が付き、既に観察された部位が明確になり網羅性を維持できる。この機能により、胃内では見落とし箇所のない検査が可能となる。後日、判定会などでのダブルチェックにおいて適正な検査との評価が得られやすい。また、「検出支援モード」では、AIにより食道がん・胃がんなどが疑われる病変が検出されるとリアルタイムでモニター画面に検出ボックスが表示される。医師は1つのモニター内で情報を確認でき、受診者も目の前の専用モニターを見ながら医師の説明を聞くことができる。当院では、導入後、この検出支援モードにてAIが指摘した、早期癌症例を経験した。 症例は、73才男性、検診目的の経鼻内視鏡検査。胃粘膜の背景はピロリ菌除菌後の高度萎縮粘膜であり内視鏡診断が困難な症例であったが、AIによる指摘を受け、幽門前庭部小弯のわずかな陥凹性病変を検査医師が確認、微細な病変の構造異常とDLからがんを疑い生検、がんの診断を得たため、静岡がんセンターにてESD治療が可能であった。… 我々は、当院のようなスクリーニング目的の内視鏡検査を主とする検診センターには、AI 診断支援技術を用いた内視鏡スクリーニング検査が大変有用であると考えている。…当院のスクリーニング内視鏡では、疲れを知らないAIと専門医の二人三脚で毎検査を完遂しているイメージである。内視鏡医がAI 診断支援技術に頼りきってはいけないが、診断のサポートとしての使用が丁度よいと考える。…今後、消化器内視鏡を行う検診センターに、AI 診断支援技術を用いた内視鏡スクリーニング検査がますます広まっていくことが望ましいと考えている。

第98号 見落としのない胃がん内視鏡スクリーニング
東京大学医学部附属病院 次世代内視鏡開発講座/消化器内科 特任准教授 辻 陽介

本文より … 本邦では優れた胃がん検診が導入されており、それにより胃がんの早期発見・早期治療が可能となってきました。現在では50歳以上の…対策型胃がん検診の方法として、胃部X線検査…の他に、胃内視鏡検査が推奨されています。胃の内腔を直接視認でき、疑わしい箇所があればその場で組織検査もできる胃内視鏡検査は、胃がん検診のツールとして今後さらに普及が進んでいくものと思われます。一方で、胃内視鏡検査は、施行する個々の内視鏡医の技術に依存した検査でもあります。…「胃がんを見落としなく指摘する」質の高い内視鏡検査に必要な要素として、以下の3つが挙げられます。1.胃内観察の質を高める:本邦の消化管内視鏡医の技術は世界的にも優れていますがそれを支えているのは個々人の献身的な努力です。…内視鏡医が質の高い胃内観察を行う上で、「観察時間」は非常に重要な要素といえます。…ヨーロッパ消化器内視鏡学会は人生で初回の内視鏡検査、あるいは「腸上皮化生」という胃がんハイリスク状態のフォローアップの内視鏡検査では少なくとも7分以上時間をかけて行うべき、と推奨しています。…2. 苦痛の少ない内視鏡検査を心がける:胃がんの見落としを避けるためには、定期的に内視鏡検査を受けることが大切です。…内視鏡医は「苦痛の少ない内視鏡検査」を施行すべきであります。…一方、使用するスコープの種類でも苦しさはかわります。基本的には、細い内視鏡ほど苦痛は少なくなります。細径内視鏡の代表格は、経鼻内視鏡、つまり鼻から挿入する内視鏡です。鼻腔から食道に入っていくルート自体、嘔吐反射が出づらくなることに加え、スコープの直径が5.9mmと大変細くなっていることにより検査が非常に楽になります。…昨今は非常に高画質な経鼻内視鏡が次々発表されており、今や画質に差はないと言えます。経鼻内視鏡を…通常の経口ルートで使用することも可能です。経鼻内視鏡は通常の経口内視鏡に比べて胃がん検出率は遜色ないというデータも発表されており、胃がんのスクリーニングにおいては積極的に経鼻内視鏡を活用すべきと言えるでしょう。3. 画像テクノロジーを活用する:画面内に胃がんが写っているのにそれに気が付かない、というパターンの見落としは一定頻度で起こり得るため、これを防ぐための対策が必要となります。昨今ではテクノロジーの発達が著しく、うまく活用することで内視鏡医の補助となることが期待されます。一例としては、LCIという画像強調内視鏡技術があげられます。これは、通常の光(白色光)に比して青紫の波長の光を強く照射することで粘膜表面の構造や血管を強調し、さらに画像処理の際にわずかな粘膜色調差を強調することで病変を見つけやすくする技術です。…胃内観察で非常に役に立つツールです。また、人工知能(AI)は内視鏡分野でも大いに活躍が期待されています。本邦でも胃がん検出を支援するAIとしてCAD EYE(FUJIFILM)、gastro AI-model G(AIメディカルサービス)が認可されており、内視鏡医の胃がん検出を支援する強力なツールとして期待されています。まとめ:内視鏡医の「腕」だけではなく、様々な技術を使いこなすことで見落としのない胃がん内視鏡スクリーニングが可能になります。今後も、我々内視鏡医は基本となる内視鏡技術を磨きつつ、新しい技術を使いこなしていく必要があるでしょう。

第97号 これだけは知っておきたい 自己免疫性胃炎の基礎知識
広島大学病院 総合内科・総合診療科 伊藤 公訓

本文より … 本邦における萎縮性胃炎の主たる病因はピロリ菌感染です。一方で、ピロリ菌感染を伴わない萎縮性胃炎もあります。その代表が自己免疫性胃炎(AIG)です。従来は稀な疾患とされていましたが、最近の報告では、内視鏡検診受診者の0.5%程度にAIG症例があるとされています。内視鏡検診での胃がん発見率は0.1-0.3%とされていますので、AIGは胃がんより高頻度にみられる疾患といえます。現在では、AIGは全ての胃がん検診従事者が正しく理解しておくべき疾患となっています。…AIGは、胃壁細胞のプロトンポンプを自己抗原として起こる炎症が主たる病態であり、細胞性免疫が主たる役割を演じるとされています。ちなみに、AIGはA型胃炎と呼称されることがありますが、A型胃炎のAは、AutoimmuneのAではありません。A型胃炎という用語は、Strickland & Mackayの胃炎分類(A型胃炎の対語はB型胃炎)に基づく用語であることを知っておいてください。…A型胃炎はAIGに、B型胃炎はピロリ菌感染胃炎にほぼ相当すると考えて良いです。…AIGの発見契機の多くは、内視鏡所見です。AIGでは萎縮領域は胃底腺領域に限局しており、ピロリ菌感染胃炎と異なる分布を示します。…内視鏡所見から全てのAIGを正確に診断することは困難です。…AIGの診断には組織検査(生検)や、血清学的検査が重要になっています。…著明な胃酸分泌低下をきたすことが特徴です。このため血清学的には、血清ペプシノゲンI、I/IIは低値を示し、血清ガストリン値は著しい高値を示します。抗壁細胞抗体や抗内因子抗体が陽性を示すことも診断にとって重要です。組織学的には、腺窩上皮直下ではなく胃底腺中層(壁細胞周囲)に炎症細胞浸潤が認められます。…AIGを診断する最も重要な意義は、特徴的な合併症があることを認識することです。…AIG症例では常に多腺性自己免疫症候群の存在を念頭に置く必要があります。…ガストリンの測定方法についても混乱がみられています。…今後の課題:ピロリ菌感染率のさらなる低下と、AIGに関する知識の向上に伴い、臨床診断されるAIG症例が増加してくることが予想されます。専門医のみならず、一般内科医においてもAIGを正しく理解しておくことは極めて重要です。実臨床においては、客観性、再現性が担保された自己抗体測定法の開発が重要となっています。

第96号 横須賀市のヘリコバクターピロリ対策事業
横須賀市医師会 中央クリニック 院長 松岡 幹雄

本文より … 横須賀市の胃がん検診は、2001年9月まではX線のみであり、受診率は2%前後、胃がん発見率は0.1%前後だった。10月からは血清ペプシノゲン法(以下PG法)か、X線かどちらかを選択できる方式になり、2011年度まで続けられ、受診者の85%はPG法を選択していた。受診率は13%前後、胃がん発見率は0.3%前後であった。2006、2007年度はX線による発見胃がんは0件だった。この事実に危機感を抱いた保健所は、医師会と対策協議を開始した。2008,2009年度の胃がん1件発見するための費用を概算してみると、X線では1,300万〜1,500万円、PG法では25万〜50万円であった。X線は費用対効果が低く、かつ放射線被曝や、読影医減少の問題もあり、十分に議論した後、思い切ってX線を全廃し、2012年3月の市議会で可決後、4月からABC検診を導入することにした。A群は必要に応じて保険診療で上部消化管内視鏡検査(以下EGD)を行い、5年目以降に一度だけ再受診可能とした。BCD群は以後保険診療で、EGD、除菌、経過観察を行い、結果を各医療機関が保健所に連絡することにした。除菌後はE群として、対象外としEGDでの経過観察とした。プロトンポンプ阻害剤、ボノプラザン服用中、胃切除後、腎不全の場合も対象外とした。BCD群の精密検査として施行したEGD画像は、医師会へ提出し、複数の消化器専門医師での二次読影を行った。…10年間の経過…発見胃がん323件のうち、早期がんは239件(74%)であった。ちなみに2007年度から2011年度で発見された胃がんのうち、早期胃がんはPG法で60.8%、X線で1.8%だった。2018年10月に市議会で「横須賀市がん克服条例」が可決されたことを受けて、2019年度から市内在住の中学2年生全員を対象にHP検査・除菌を全額公費負担で行うことになり、保健所、教育委員会、医師会で具体策を検討した。尿ウリネリザで1次検査を行い、陽性者は、医師会が選定した医療機関でUBTか便中HP抗原で確定検査を行った。…また中学2年生から40歳までの途中の約25年間、市民は検査を受ける機会がないことから、これらの穴埋めも考慮し、2023年4月からは対象者を20歳、30歳にも拡げ、本人負担無しで行うこととして、初年度として現在進行中となっている。まとめ:ABC検診は、胃がんのリスクを有する者にEGDを行うものであり、検査効率が良く、EGDへのゲート ウエイとなり得るものである。また費用対効果もよく、胃がん発見という目的以外にも、HP陽性者に対して除菌を行うので、今後の胃がん発生の減少がより期待され、医療費の抑制にもつながるものと思われる。

第95号 内視鏡の将来を展望する ー日本から世界へー
世界内視鏡学会理事長 東京慈恵会医科大学名誉教授 田尻 久雄

本文より … 私たちは、未来の内視鏡医学を創造するために過去の歴史を振り返る必要があります。…ある日突然新しいことが出現したということはなく、すでに行われた先人の研究を検討して、それに新しい着想と改良工夫を加えて、今日の内視鏡が出来上がっているのです。内視鏡で可能な分野は無限といいても良いでしょう。…1985年以降、電子内視鏡や超音波内視鏡が導入され、その普及による内視鏡診断が進歩して、食道・胃・大腸早期癌のより精緻な内視鏡診断学が構築されていきました。1980年代に主流であった内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、2000年代より、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)へと目覚ましい発展を遂げていきました。内視鏡治療のイノベーションのためには、消化器内視鏡医と外科医の協力並びに産学官・医工連携による長期的視野での研究開発の推進が必要です。そして、エキスパートの人間の技能とロボット技術の融合に加えて、人口知能(AI)と情報系を複合した次世代技術を進化させていくことが重要です。…内視鏡の歴史を振り返ると、それぞれのイノベーションは、最初は個人の情熱から始まる小さな挑戦に過ぎないものでした。その後、患者さんや医療現場に向き合う中で常に技術や医療機器の改良・工夫を重ねて、磨き続けることで、大きなイノベーションにつながってきたものと思います。内視鏡の将来展望を語るうえで、AI内視鏡の導入は大きな意義があります。医師の時間的・労力負担減少、早期消化管癌が自動的・リアルタイムで発見・診断できることで、病変の見逃し減少と診断能向上する。より早く、より容易に、より客観的な質的診断が可能となり、人間の眼で識別できない精緻な診断が可能になる。内視鏡診断の均霑化、指導医不足の地域では、AI導入により効率的な教育効果が得られるようになります。外科手術の時代的変遷は、開腹手術、内視鏡下手術、ロボテック手術、デジタルsurgeryへと進化しています。…現在、内視鏡治療は、LECSで代表されるように内視鏡外科と内視鏡医との協力が不可欠です。近い将来、AI、Io Tを融合したロボテック技術の導入が期待されています。内視鏡医の手技をロボット技術で再現させ、人間の判断すべき状況を客観的にAIにenhanceさせて、内視鏡治療を言語化、数値化することで今後の変革をもたらすことができます。…内視鏡の発展のためには、Multidisciplinary(集合的・複合的)アプローチも必要です。…最後に日本消化器内視鏡学会半世紀の歴史を振り返り、若い先生方に3つのメッセージをお伝えしたいと思います。1つ目は、新たな開発の元はニーズから生まれること、2つ目は内視鏡機器開発・技術革新において、これまでもそうであったように、これからも常に日本が世界をリードし続けること、そのためにKey Technologyの融合(Robotics、AI、Bionicsなど)、産学官の連携が重要です。3つ目は、グローバル化の目 的と意義を見直して世界視点の戦略を立てて進んでいくことです。…、内視鏡先進国、準先進国、新興国を図5に示します。次世代を担う内視鏡医に期待することは、世界と渡り合える視野を磨いていくとともに、技を磨き、仲間を増やし、日本国民のみならず、世界中の人々に最高の内視鏡医療を提供していくことが望まれます。そして、日本を内視鏡医療立国にすることを提案したいと思います。

第94号 本来の胃がん内視鏡検診の目的から見た1.5次読影へのAI(人工知能)の応用
藤田医科大学 消化器内科 柴田 知行

本文より … 背景・目的:早期胃癌のみならず進行癌に関しても確実にスクリーニング出来る事が特に1次スクリーニングで重要となってくる。胃がんの検出をAI(人工知能)により支援できれば、医師の労力削減や見落としの抑制が可能である。我々はこれ迄にセグメンテーション技術を用いた、正確な早期胃癌の範囲設定を行えるAI技術を応用した胃癌の診断システムを報告してきた。今回、胃癌の深達度も考慮した早期胃癌から進行癌までの連続した学習セットを用いて、本来の胃癌の1次スクリーニングに適したモデルを作成した。…AI検診スクリーニングモデルの構築法:本モデル構築のために藤田医科大学病院にて撮影された内視鏡画像を用いた。疾患内訳は、正常42症例(1208枚)、早期胃癌95症例(532枚)、進行胃癌50症例(637枚)であり、正常、早期胃がん、進行胃癌の3種類の分類セットとした。内視鏡画像を正方形に切り取った後512×512画素にリサイズし、画像内の胃癌浸潤範囲のセグメンテーションラベルを作成した。学習用画像を回転させた画像を作成し、最終的に正常4832枚、早期胃癌4797枚、進行胃癌4459枚を学習に使用した。…本システムの検診現場での応用提案:現在、胃癌内視鏡検診では、内視鏡画像をクラウドにアップロードし、遠隔で第二読影者が診断するシステムに移行しつつある、そこで、本システムをこのクラウドシステムに装着すれば、第二読影の医師が読影する前に少なくとも胃癌(早期から進行癌まで)の有無が示され、読影状況の大幅な労働軽減が可能になると考えられる。おわりに:AIによる胃癌の確実なスクリーニングのために早期胃癌から進行胃癌までシームレスな指摘システムを構築した。本システムを検診現場で広がりつつあるクラウドに当てはめることにより、二重読影の負担軽減への寄与が期待される。

第93号 日本人における生年別の健常胃粘膜の割合
一般財団法人 茨城県メディカルセンター 消化器・内視鏡センター長 齋藤 洋子

本文より … 日本人成人における生年別の正常胃粘膜(健常胃)の割合:茨城県メディカルセンターにおける人間ドックはその殆どを上部消化管造影検査によりスクリーニング検査を実施している。2007年度から要内視鏡検査の判定と合わせ背景胃粘膜診断を行い受診者に通知している。2007-2019年度受診者216,152人のうち、1935年から1985年までの5年毎の生年と1990年以降生まれを一つの生年とした計12のグループを抽出した。14枚の造影X線画像のうち、二重造影法の6枚を背景粘膜の診断に使用した。X線画像による健常胃の胃小区や襞は、炎症や萎縮のある胃粘膜、特に腸上皮化生を伴う胃粘膜とは異なる。その基準に則り、健常胃粘膜とピロリ菌感染に関連した活動性や非活動性の胃炎を診断し、対象を健常胃と胃炎の2群に分けた。X線検査診断後にピロリ菌の抗体検査結果を照合した。X線で胃炎と診断された15,884人は除菌歴の有無に関わらず分析に含め、健常胃と診断された26,073人から除菌歴があった649人は分析から除き、25,424人を健常胃として分析した。12のグループ毎の結果…1935年から1990以降生まれに向けて直線的に健常胃の割合が増加し、胃炎の割合は減少していた。健常胃と診断された対象は、全例ピロリ菌抗体陰性であった。…ピロリ菌未感染の正常胃粘膜(健常胃)の割合が増加していることで考えること…我が国の年齢階級別胃がん罹患率は、1985年から全ての年齢階級で低下している。1985年から2015年までの5年毎の50歳年齢時の健常胃の割合は19.8%か71.2%に増加している。…胃癌の罹患の減少は健常胃と胃炎の割合に大きく関連していると考えられる。年齢区分のみで検診対象者として全員に実施している現在の胃がん検診のあり方は再考が必要である。

第92号 ピロリ菌除菌戦略は日本に最適な胃がん対策である
北海道医療大学 客員教授、北里大学大学院医療系研究科 小和田 暁子

本文より … コホート状態遷移モデルを構築し、5つの戦略、①ピロリ菌除菌戦略(20歳以上にピロリ菌除菌治療を実施し、50歳以上ではさらにピロリ菌除菌後の胃がんの早期発見のための毎年1回のフォロー内視鏡検査を追加する)、②50歳以上に対して毎年1回の内視鏡検診、③50歳以上に対して2年に1回の内視鏡検診(現行)、④50歳以上に対して3年に1回の内視鏡検診、⑤検診なしについて、医療費支払者の立場から生涯にわたる期間について分析しました。対象は、20歳・30歳・40歳・50歳・60歳・70歳・80歳とし、年齢別のピロリ菌感染率についても考慮しました。…ベースケース分析の結果では、ピロリ菌除菌戦略は、すべての年齢において内視鏡検診と比較して、費用を最も小さく、生存年数を最も大きくしました。…確率的感度分析の結果では、すべての年齢において、支払い意思額が5万ドル/QALY(quality-adjusted lifeyears)と10万ドル/QALYの両方で、ピロリ菌除菌戦略の費用対効果が高くなる確率は100%となり、ピロリ菌除菌戦略の費用対効果が最も高いという結果が強固であることがわかりました。生涯蓄積効果では、ピロリ菌除菌戦略は、現行の隔年の内視鏡検診と比較して、医療費を2.7兆円削減し、生存年数を3,716万QALYs延長し、胃がん患者の発生を447万人、胃がんによる死亡者を32万人未然に防ぐことがわかりました。…胃がんの一次予防であるピロリ菌除菌戦略は、内視鏡検診よりも費用対効果が高く、医療費を削減し、胃がん発症予防効果により胃がん罹患数・死亡数をともに減少させることが予測されます。日本の胃がん対策において、ピロリ菌除菌戦略は、現行の内視鏡検診に代わって強く推奨されます。

第91号 より良い内視鏡診療と教育のために
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部 角嶋 直美

本文より … 消化管内視鏡検査の歴史を振り返ると、1950年代に胃カメラの撮影手技が確立され、実用化された。…1985年に先端にCCDを備えたビデオスコープが発明され、内視鏡画像は電気信号に変換されモニターに表示されるようになった。…1990年代初頭に開発された内視鏡画像のファイリングシステムは、21世紀には瞬く間に普及した。全ての内視鏡画像がコンピューターに保存され、いつでもどこでも呼び出すことができるようになった。…現在、さまざまなモデルやシミュレーターが開発され、ハンズオントレーニングやライブデモンストレーション、動画配信教育が普及している。…国内外の内視鏡学会では専門医の資格を得るためにいくつかの条件を要求している。基本学会の認定医に加え、一定期間の認定機関でのトレーニングや一定数の症例経験が求められ、専門医として適切な知識を持っていることを確認するために、コンピューターベースの試験が行われる。…近年、内視鏡分野において、人工知能(AI)を活用した品質管理が実用化されてきている。内視鏡時に見落とされた胃領域を監視できるAIシステムが開発され、前向き研究では、内視鏡観察による死角が15%減少した。胃がん検出のためのAI研究は数多くあり、AIは専門医よりも高感度・高精度で胃がんを検出し、診断に要する時間も大幅に短い。内視鏡治療のトレーニングに関しても、高価格で限られた施設でしか購入できないものから、低コストで環境に優しいモデルなど様々なものが開発されている。近い将来、内視鏡診療において、AIは不可欠なパートナーとなることが予想される。医学生・初心者の早期トレーニング、内視鏡検査の質の向上と診断支援、治療の現場では高速大容量の通信技術と組み合わせて遠隔医療による地方の医療格差の軽減などが可能となる。我々内視鏡医は、日々技術をみがき知識を更新し続けなければならないが、AIをうまく活用することにより効率的により良い内視鏡診療と教育を実現できるものと考える。

第90号 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の内視鏡治療
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部 角嶋 直美

本文より … 本邦における非乳頭部十二指腸癌の多くは局所にとどまる状態で発見されており、またその約半数において内視鏡治療が行われている。…表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)を腺腫あるいは粘膜下層(SM)までにとどまる腺癌と定義し、孤発性のSNADETの内視鏡治療について述べる。…十二指腸SM癌は5-42%のリンパ節転移頻度が報告されている。そのため十二指腸SM癌では、リンパ節郭清を伴う外科切除が必要である。手術による合併症や術後のQuality of Lifeを考慮すると、転移のリスクのない粘膜内癌あるいは前癌病変である十二指腸腺腫に対して、局所的な治療を行うことは合理的であり、腺腫・粘膜内癌が内視鏡治療の対象となる。十二指腸腺腫は5mm以下であれば増大速度が緩徐であり経過観察も許容される。一方、発見時に高異型度腺腫と診断された病変や腫瘍径が20mmを超える病変は…積極的な切除が望ましい。…十二指腸は壁が薄く、屈曲しており、胆汁・膵液などの暴露があるなどの解剖学的な特徴から、内視鏡治療の難易度および偶発症の頻度が高い。また、腫瘍サイズが大きくなるほど偶発症の頻度も高くなる…通電を伴わないCold snare polypectomy(CSP)は、その簡便性や偶発症リスクの低さから径10mmまでの内視鏡的に低異型度腺腫と診断される病変が良い適応である。…腫瘍径が20mm程度までの高異型度腺腫・粘膜内癌が疑われる病変では、EMRまたはUEMRを選択する。…腫瘍径が20mmを超える、あるいはEMR/UEMRで切除困難な病変では、ESDやLECSが選択される。…十二指腸病変に対する内視鏡治療法の選択においてスタンダードはまだなく、各施設の実情に合わせて治療が選択されているのが現状である。それぞれの治療のメリット・デメリット、技術的困難度を考慮し、対応が難しいと判断した場合にはhigh volume centerへの紹介を検討する必要がある。

第89号 表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍の内視鏡診断
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部 角嶋 直美

本文より … 本邦における非乳頭部十二指腸癌の粗罹患率は…欧米と比較しかなり頻度が高い。…2021年7月には十二指腸癌診療ガイドラインが作成され、診断・治療における一定の指針が示された。十二指腸癌の取り扱い規約が2023年1月の時点で存在せず、早期癌の定義がない…表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)を腺腫あるいは粘膜下層(SM)までにとどまる腺癌と定義し、孤発性のSNADETの診断について…非腫瘍と腫瘍の鑑別:十二指腸では十二指腸炎、腺窩上皮化生、異所性胃粘膜、ブルンネル腺過形成、など様々な非腫瘍性病変がみられる。これらは、部位や個数、表面構造、領域性の有無などの所見によりある程度鑑別可能である。白色光(WLI)によりSNADETを疑う所見としては、色調や粘膜模様が周囲粘膜と異なり、かつ領域性があることが重要である。…十二指腸でしばしば観察される絨毛の白色化(WOS)は、上皮内の脂肪滴であることが知られている。健常十二指腸粘膜や炎症・過形成性変化でもみられるが、腫瘍化に伴い脂肪の吸収やリンパ管への移行が障害され…WOSの見え方に違いを生じ、腫瘍・非腫瘍との鑑別や粘液形質・異型度予測に役立つ…低異型度腺腫(LGA)と高異型度腺腫(HGA)/癌の鑑別:WLIでは、形態…、分葉の有無や不均一性、色調、絨毛の白色化および病変径が重要である。表面平滑あるいは均一な分葉を有する白色隆起はLGAであることが多く、陥凹や発赤を有するもの、瑞々しさがなく不均一な凹凸を有する病変、腫瘍径が10mm以上で発赤主体の病変はHGA/癌である可能性が高い。…SNADETにおける生検の正診率は7割程度であるが、WLIやIEEなどの内視鏡診断による正診率は、生検診断と同等以上である…球部におけるIs型腫瘍や粘膜下腫瘍様隆起を呈する病変では、ブルンネル腺過形成との鑑別が困難で、まれにSM癌があることから、生検や超音波内視鏡を含めた総合診断をするべきである。

第88号 「内視鏡AI開発の現状と将来展望」特別発言
東京大学大学院医学系研究科 器官病態内科学講座 消化器内科学分野教授 藤城 光弘

本文より … 厚生労働省「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」(2019年6月)において、画像診断支援領域は、健康・医療・介護・福祉分野においてAIの開発・利活用が期待できる領域の一つとして位置づけられている。さらに、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局が公表する「AI戦略2022」(2022年4月)においては、画像認識、自然言語処理等でのAIの社会実装による産業・社会の基盤作りの必要性が強調され、「日本が強みを有する分野とAIの融合」が一つの目標に掲げられている。…内視鏡AIの研究開発・人材育成・社会実装は、国家戦略の一つとして本邦で推し進められるべき課題と言える。…特別講演をされたAIメディカルサービスのCEO 多田智裕氏は、いち早く内視鏡画像診断支援AIの必要性・重要性を説いた医師・医学研究者の一人であり、早期胃癌発見AIの開発を皮切りに、社会実装を目指した数々の内視鏡AI開発研究を展開している。…同社の出資により、東京大学消化器内科が協力講座となり、①内視鏡AIにより内視鏡診断における質の向上を目指す、②内視鏡AIの社会実装における課題を抽出し解決する、③内視鏡AIを活用できる人材を育成する、④実臨床の経験に基づいて、次世代の内視鏡診断・治療法を確立することを目的に、2023年1月から東京大学社会連携講座「次世代内視鏡開発講座」が設立され…産学連携により内視鏡AIの研究開発・人材育成・社会実装を加速することが期待されている。…日本消化器内視鏡学会では、日本の内視鏡診療の実態を把握するための世界最大の内視鏡診療データベースの構築、標準化された高度な臨床研究の実現のための臨床研究レジストリーのデータ化、専門医制度への効果的な対応のための医師の診療実績の精確な把握を目的に、JED projectを開始しており、今後は画像診断支援AIのみならず、画像と臨床情報融合、さらにはゲノム、エピゲノム、腸内細菌叢等の情報融合による、がん検診や各種疾患リスク・治療効果予測AIの開発が期待される。

第87号 内視鏡AI開発の現状と将来展望
医療法人ただともひろ胃腸科肛門科 理事長/株式会社AIメディカルサービス 代表取締役 多田 智裕

本文より … 近年では内視鏡診断を支援するAIの研究が進み、検出・鑑別の機能が実装のフェーズに移行しつつあります。…”内視鏡医療の現場における2つの課題を解決したい”という思いが発端でした。1つ目は、「胃癌の見逃しリスク」です。内視鏡検査において早期胃癌の4.6~25.8%が見逃されていると言われており、診断が難しい早期胃癌は見逃しのリスクがあります。2つ目は、「対策型胃がん検診での二次読影時の内視鏡医の負担増加」です。…2018年にHirasawaらが世界初の内視鏡静止画像における胃癌検出AIを報告しました。…T1b以深の癌は全て検出され、また6mm以上の病変については感度98.6%であり、胃癌検出におけるAIの有用性が示唆されました。2019年にIshiokaらが前出のAIモデルを用いて、世界初の内視鏡動画における胃癌検出AIを報告しました。…感度は94.1%であり、静止画と同様の高い検出能を示しました。病変の癌・非癌を鑑別するAIの研究も行われています。HoriuchiらはNBI拡大内視鏡を用いた胃癌鑑別AIの性能を…比較検討したところ、感度87.4%で、専門医と同等であることを報告しました。…胃癌の深達度診断におけるAIの有用性も報告されています。Nagaoらは…構築したAIを用いて検証用画像における癌の深達度診断能を検討したところ、M-SM1とSM2以深の鑑別精度は白色光で94.5%、NBI画像で94.3%、色素内視鏡画像で95.5%でした。…2021年8月に「胃癌鑑別診断支援AI」のPMDAへの薬事承認申請を終え、継続審議中です。…内視鏡AIは患者・医師双方にとって、従来の内視鏡検査と変わらない手順で、癌の見逃し低減と読影作業負荷軽減を実現できる画期的なツールです。日本の内視鏡医の英知を結集した内視鏡AIが、世界の内視鏡医療の発展に寄与することが期待されます。

第86号 進行食道がん治療の現状と将来展望
東京大学医学部附属病院 消化器内科 坂口 賀基

本文より … 進行食道がんに対する根治治療には、外科手術と化学放射線療法という2つの大きな柱である。治療選択に際して腫瘍による食道通過障害の有無、リンパ節転移の有無、耐術能の有無を含めて食道がんの状態や患者さんの状態を包括的に評価する必要がある。本邦の食道癌診療ガイドラインにおいてcStage II、IIIの進行食道がんでは、耐術能がある場合には外科手術療法を中心とした治療が推奨される。耐術能がない場合や、cStage IV以上の場合には化学放射線療法が推奨されるが、患者さんの全身状態に応じて化学療法もしくは放射線療法のいずれかしか施行できないこともある。…進行食道がんに対する治療法の選択や管理は実に多様化しており、包括的な治療と管理が可能である専門施設で実施すべきである。外科手術;食道がんの大半を占める胸部食道がんに対しては胸腹部食道の全摘と頸部・胸部・腹部の3領域リンパ節郭清が一般的であり、胸腔鏡を用いた手術を実施することにより手術の侵襲性を減らせる可能性も報告されている。…また外科切除の術前もしくは術後に化学療法を併用することにより予後改善効果も報告されており、周術期に化学療法を併用することが推奨される。…化学放射線療法;耐術能がない場合や、cStage IV以上の場合には化学放射線療法が推奨される。…外科手術と化学放射線療法の有効性の比較をすべく国内で臨床試験が実施中である。…将来展望;進行食道がんは予後不良な疾患であり、根治的外科手術や化学放射線療法を実施した後にも再発や転移のリスクが高い。食道がんを早期発見することが、予後改善にとって最も重要な課題である。そのために、食道がん高リスク患者に対する内視鏡検診をより徹底することが最も有効な手段と考えられる。…近年多くのがんに対する分子標的薬の開発が急速に進んでいる中で、食道がんに対しても有効な化学療法が新たに開発されることが望まれる。

第85号 早期食道がん内視鏡治療の現状と将来展望
東京大学医学部附属病院 消化器内科 坂口 賀基

本文より … 本邦における食道がんは男女比が6:1と男性に多く、男性の部位別がん死亡患者数7位の疾患である。本邦において約90%を占める食道扁平上皮癌が発生する危険因子として飲酒と喫煙の影響が強いことが知られている。また日本人の約4割が飲酒により顔が赤くなる「フラッシャー」となるALDH2*2遺伝子多型を保有しており、こういう方はアルコールの分解過程で発生する発がん性物質であるアセトアルデヒドが体内で長く残るため食道がんになりやすいとされている。食道がんはStage I までに早期発見できた場合には低侵襲治療である内視鏡的切除により5年生存率約90%が得られる…どのような食道がんが内視鏡治療の候補となるのか?内視鏡切除の適応の原則は「リンパ節転移のリスクがほとんどない」ことと、「腫瘍が完全切除できる」ことである…内視鏡的切除が可能であるか評価するためには術前に壁深達度を評価することが非常に重要であり、日本食道学会ではそのために超音波内視鏡もしくは拡大内視鏡による精査を推奨している。また広範に及ぶ食道の内視鏡的切除を行った際には瘢痕収縮により食道の通り道が狭くなるリスクが高い。術後狭窄リスクが高い場合には十分な狭窄予防策を講じることも重要である。…内視鏡治療の実際;Stage Iまでの食道がんに対する標準内視鏡治療は内視鏡的切除であり、根治性を正確に評価するためにも一括切除が望ましい。10mm前後までの食道表在がんに対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)も有用であり、特に透明キャップを用いたEMR(EMRC)では低リスクで高い一括切除率が得られる。…根治性の評価;内視鏡切除が実施された後に病理学的評価を行い、食道がんに対する治癒が得られたか判定する必要がある。…将来展望;食道表在がんに対する内視鏡治療は低侵襲でありながら高い根治性も期待でき、既に世界的にも多くのガイドラインで食道扁平上皮癌に対する標準治療とされている。一方、海外に多い食道腺癌に対する内視鏡治療の適応や根治性評価基準はまだ今後の課題である。

第84号 進行胃がん治療の現状と将来展望
東大病院 消化管診療グループ長 辻 陽介

本文より … 近年では、腹腔鏡下胃切除術がより低侵襲な外科切除術の方法として普及しています。胃がんの深達度が粘膜下層から筋層までに留まりリンパ節転移がないと想定されるステージの胃がん(cStageⅠ)では、大規 模ランダム化比較試験において開腹幽門側胃切除術(ODG)に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術(LADG)の生存における非劣性が検証されています。この結 果、cStageⅠの胃がんに対するLADGは標準治療とみなされています。…胃がんに対するロボット支援下手術は2018年度に 保険収載されました。多関節鉗子により鉗子可動域の自由度が上がったこと、術者の手ブレがコントロールされることなどからより高度な手術が実施可能と期待されていますが、胃がん手術における有用性は現在JCOG1907試験で検証中ですので、ガイドライン上は「cStageⅠ胃がんについては弱く推奨」にとどまっています。…切除不能進行・再発胃がんに対しては化学療法が行われます。昨今の化学療法の進歩は著しく、高い腫瘍縮小効果が見込めるようになってきました。最近の化学療法の進歩としては、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害剤の導入があります。胃がん化学療法開始前にはHER2受容体の発現をまずチェックします。HER2陽性胃がんであれば、HER2タンパクに特異的に結合し抗腫瘍効果を発揮するトラスツズマブを含んだレジメンが推奨されます。…本庶佑先生のノーベル賞受賞で話題になった…胃がんの一次治療におけるニボルマブの有効性を示した研究結果を受け、2021年11月、治癒切除不能な進行・再発胃がんに免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブと化学療法の併用療法が承認され、胃がん治療ガイドライン委員会からも「推奨」の速報が出されました。現時点では、HER2陰性胃がんであれば一次治療としてニボルマブと化学療法の併用が推奨されるようになっています。

第83号 早期胃がん内視鏡治療の現況と将来展望
東大病院 消化管診療グループ長 辻 陽介

本文より … 胃がんは早期発見・早期治療により良好な予後が期待できるがんでもあります。内視鏡発祥の地である日本では、胃がんを早期に発見し、そして内視鏡を用いて治療する技術を発展させ、世界に発信してきました。…1. どのような胃がんが 内視鏡治療の候補となるのか?…「胃の外側に転移をしておらず、局所にとどまっている胃がん」は、胃がんの部位を局所的に切除することで根治的に治療をすることができます。日本には多数の胃がん手術の実績があり、その蓄積されたデータを元に「リンパ節転移の可能性が極めて低い」とされる病変が抽出されました。胃がんは、どの深さまで腫瘍が浸潤しているか(深達度)が大きく転移リスクと関わっていることが分かっています。…1990年代までは内視鏡治療技術に限界があり、腫瘍径が20mmを超えるような大きな胃がん・過去の胃潰瘍の瘢痕上にできた胃がんなどは技術的な問題から内視鏡的切除は困難でした。2000年代初頭にESDの技術が本邦から確立され、これにより胃がんの内視鏡的切除は飛躍的に発展しました。2. 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の発展:日本は胃がんの外科手術においても世界を牽引してきました…3. 根治性の評価:ESDを施行した後、病理評価を行い、内視鏡切除のみでその胃がんが治癒したとみなせるか、判定する必要があります。4. 将来展望:早期胃がんに対する内視鏡治療は日本が世界をリードしている領域です。今後、高齢の早期胃がん患者が増加するに従い、上記の「根治性の評価」についても時代に応じた考え方が必要になってきます。

第82号 大規模長期観察研究による2010年代における胃がんのリスク因子について
東京大学医学部附属病院 消化器内科 高橋 悠

本文より … 内視鏡検診による胃がんスクリーニングが胃がん死亡抑制に役立つという報告も近年されてきている。本邦においてはH. pylori 菌感染率は若年者ほど低くなっており、一律内視鏡検査を行うのはコスト面と安全面から最適な方法とは言えず胃がん発症リスクに応じて内視鏡検査の適応を決めるべきと考える。胃がんリスク層別化法としてH. pylori 抗体検査と血清ペプシノゲン(PG)検査を組み合わせた胃がんリスク層別化検診(ABC法)が提唱されており、コスト低減に役立つことなどが報告されているがピロリ菌感染率が低下している現在における有用性については報告されていない。…同意が得られた20,773人のうち条件を満たした19,343人について解析を行った。ABC法により層別化を行ったところA群は11,717例、B群は4,452例、C群は2,098例、D群は66例、E群は1,010例であった。2010年の研究開始時点でA群では3例、B群では8例、C群では6例、D群では1例、E群では0例の胃がんを認めた。10年間のフォローアップにより、A群からは9例、B群からは28例、C群からは43例、D群からは1例、E群からは3例の胃がんを認めた。…胃がん発症率と有意な相関を認めた因子としては、 単変量解析においては50歳以上、男性、ALP高値、 PGII高値、PGI/II低下、PG法陽性、H. pylori 抗体陽 性、ABC法、喫煙習慣があった。これらについてCox Hazard解析を行うと、50歳以上、ABC法、現在喫煙 者が有意な胃がん発症リスク因子であった。…結語 2010年代においてもABC法による胃がんリスク層別化ができることが判明した。

第81号 胃がん内視鏡AIの現状と今後の展望
東京大学医学部附属病院 光学医療診療部 永尾 清香

本文より … 胃がん検出AI 胃がんの早期発見には内視鏡検査が有用であるが、見逃しを減らしより確実に早期胃がんを診断するためには訓練が必要である。そこで、内視鏡医の技量に関わらず高い精度で病変検出を行うために、胃がん検出AI が開発され、その有用性が報告されている。AIを用いることで内視鏡医の技量に関わらず高い精度で胃がんを検出することが可能になることが示唆された。胃がん深達度AI 早期胃がんに対する治療として、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が本邦においても世界でも広く行われている。ESDの適応を判断する上で、深達度は重要な要素の一つである。…胃がんの治療方針を判断する上で、M~SM1か、SM2以深かを正確に予測する必要がある。現状では胃がんの深達度予測は内視鏡所見に基づいて行われるが、術前の深達度予測と病理結果が一致しないこともしばしば経験されるため、術前深達度予測の精度向上が求められている。…我々は世界的にみても最大規模の画像データを使用し、通常光画像・狭帯域光画像・インジゴカルミン散布画像のそれぞれに対応した胃がん深達度予測AIシステムを株式会社AIメディカルサービスとの共同研究で開発した。通常光画像において…感度89.2%・特異度98.7%・正診率94.4%と高い診断能を示した。狭帯域光画像で…感度80.9%・特異度97.8%・正診率93.9%であった。インジゴカルミン散布画像で…感度89.2%・特異度97.6%・正診率94.2%であった…我々が開発したAIシステムは本稿執筆時点で世界的にみても優れた正診率を示し、術前の深達度予測精度の向上に貢献できるのではないかと期待される。…胃がん内視鏡AIの精度が向上すれば、内視鏡医の技量に関わらず、胃がん検出率の向上や、適切な治療の選択ができるようになる可能性があり、さらなる発展が期待される。

第80号 赤色狭帯域光観察(Red Dichromatic Imaging)の紹介と内視鏡的粘膜下層剥離術における臨床的有用性
東邦大学医療センター大森病院 消化器内科 藤本 愛

本文より … 筆者は2013年から慶應義塾大学病院腫瘍センター矢作直久教授のグループでRDIの臨床実用化に向けて検証を行い、2018年から2年半は汎用化を目指した臨床研究を行いました…1. RDIで出血点が明瞭に視認できる機序…RDIは600nmと630nmの2つの長波長に狭帯域化した画像強調内視鏡画像で、内視鏡スコープのボタンを切り替えることで瞬時に使用でき…粘膜表層から1000μm~1500μmに存在する直径500μm以上の比較的太い静脈を視認しているとされ、これはブタ胃を用いた動物実験でも検証されました…矢作らは、ESD中の出血時にRDIで観察すると、出血点が明瞭に同定でき、また出血の色が穏やかな黄~オレンジ色に視認できることから、ストレスのない確実な止血処置が可能になる点に着眼しました…2. ESDの止血処置にRDIは有用?~前向究の結果報告~…2016年から国内7施設による前向き多施設共同研究を行い…しかし、主要評価項目と設定した1回の止血時間においてRDIによる短縮効果は認めませんでした…副次的評価項目と設定した、ESD治療時間短縮効果に関しても有意差なし、しかし1回の止血処置中に内視鏡医師が感じる心理的ストレスは5段階の主観評価でRDIが有意に少なく、安全性については問題ありませんでした…期待したRDIによる止血時間や治療時間短縮効果はみられなかったのですが、多くの術者が緊張を強いられる止血処置を少ないストレスでかつ安全に行うことができるのは、RDIの大きな有用性ではないかと考えております。

第79号 白色光観察を用いた早期胃癌の診断
東邦大学医療センター大森病院 消化器内科 藤本 愛

本文より … NBI併用拡大内視鏡診断は専用スコープと内視鏡医の技量が必要で、現在でも診断の基本は白色光観察による診断法です。1.拾い上げ:わずかな色調変化と境界のある陥凹や隆起に気が付かなければなりません。非噴門部胃癌の99%がH. pylori 既感染の背景胃粘膜から発生しますが、このような胃粘膜は全体に発赤調である上に、萎縮性胃炎 や腸上皮化生による凹凸不整があるため、早期胃癌のわずかな色調変化や隆起・陥凹に気付くことは困難です。胃癌高リスクの背景胃粘膜は萎縮性胃炎や腸上皮化生、鳥肌胃炎、黄色腫です。問診でH.pylori 感染や除菌歴を確認し、高リスクの胃粘膜所見があれば、胃癌があるかもしれないという心構えで検査をすることが重要です。検査の準備や環境を整えることも忘れてはいけません。…また、内視鏡切除例の同時多発性胃癌は4.8~16.5%と言われており、検査中に胃癌に気が付いても、全体をまず観察することが重要です。2.質的診断(腫瘍性・非腫瘍性病変の鑑別)・範囲診断:NBI併用拡大内視鏡診断が有用ですが、日本医科大学貝瀬満先生らは、白色光観察である程度診断することが可能と報告されています。白色光観察で早期胃癌を疑う病変中、NBI非拡大観察で①唐茶色の病変は腫瘍性病変が23%、非腫瘍性病変が77%、②利休色の病変はすべて非腫瘍性病変でした。非拡大NBI観察はどの内視鏡スコープでも使用できるため、唐茶色であれば生検するとよいでしょう。また、今後は研究開発中のAI診断も日常臨床で使用できる時代になることでしょう。酢酸インジゴカルミン染色法による範囲診断は簡便で有用です。3.深達度診断:基本は硬さや病変周囲の襞の性状による従来の診断法で行っています。超音波内視鏡診断(EUS)による早期胃癌の正診率は深達度M/SM1の感度は98%と良好ですが、特異度は69%と低いことが問題点です。…自然開口向け内視鏡用視野確保ゲル、ビスコクリア®を用いた…探索的研究で…従来のEUSによる低い特異度を改善できる可能性があると考えています。

第78号 ピロリ菌除菌成功後の胃内視鏡検査は費用対効果が高い
北海道医療大学 客員教授、北里大学大学院医療系研究科 小和田 暁子

本文より … ピロリ菌除菌成功後に軽度から重度の胃粘膜萎縮や組織学的腸上皮化生を伴う患者では、除菌後も胃がんを発症するリスクがあり、…高齢者においては、10年以上にわたって胃内視鏡検査によるフォローアップが必要とされている。…2021年にDigestive Diseases and Sciencesから発表した研究成果を基に、ピロリ菌除菌成功後の胃内視鏡検査での費用効果分析の結果について紹介した…1年に1回の胃内視鏡検査、2年に1回の胃内視鏡検査と胃内視鏡検査を行わない場合の3つの戦略で、マルコフモデルによる決定樹を構築した。対象は、ピロリ菌除菌に成功した50歳の患者の仮想コホートとし、評価指標は、費用、生活の質を考慮した生存年数(QALYs)、生活の質を考慮しない生存年数(LYs)、増分費用効果比である。…結果、基準分析では、2年に1回の胃内視鏡検査、増分費用効果比、胃内視鏡検査を行わない場合、胃内視鏡検査は胃内視鏡検査を行わない場合よりも費用対効果が高かった。確率的感度分析で、胃粘膜の重症度別のシナリオ分析を追加し検討した結果、軽度から中等度胃粘膜萎縮の患者では、2年に1回の胃内視鏡検査が99.9%で費用対効果的に最も優れており、重度胃粘膜萎縮の患者では、1年に1回の胃内視鏡検査が98.4%で費用対効果的に最も優れていた。…ピロリ菌除菌成功後の患者における胃がんを早期に確実に発見するためには、胃がんサーベイランスシステムを構築し、胃粘膜萎縮の重症度や胃がん発症率を考慮したリスク管理による精度の高い胃内視鏡検査による検診体制の確立が早急に望まれている。

第77号 胃がんを予防する ピロリ菌除菌戦略の経済効果は大きい
北海道医療大学 客員教授、北里大学大学院医療系研究科 小和田 暁子

本文より … 本稿では、2021年に Helicobacter から発表した研究成果を基に、日本が世界を先駆けて実践している慢性胃炎患者に対するピロリ菌除菌戦略の費用効果分析の結果およびその経済効果や胃がん予防効果について紹介したい。…医療費支払者の立場から、生涯にわたる期間について、マルコフサイクルツリーに直接つながる構造をもつピロリ菌除菌戦略とピロリ菌を除菌しない戦略を比較したコホート状態遷移モデルを構築した。…評価指標は、費用、生活の質を考慮した生存年数、生活の質を考慮しない生存年数、増分費用効果比、胃がん罹患数、胃がん死亡数であった。サイクルの長さは1年とし、すべての費用とユーティリティは3%の割引率で求めた。さらに、マルコフコホート分析を実施して、ピロリ菌を除菌しない戦略と比較して、ピロリ菌除菌戦略が防いだ生涯にわたって累積された胃がん罹患数と胃がん死亡数を求めた。その結果、20歳から80歳までのすべての年齢において、ピロリ菌除菌戦略は、ピロリ菌を除菌しない戦略と比較して、費用を削減し、効果がより高いことが明らかになった。…2013年から2019年までの間に除菌された患者について、生涯にわたって蓄積された経済効果をみると、ピロリ菌除菌戦略は、ピロリ菌を除菌しない戦略と比較して、3.8千億円の費用を削減した。…胃がん予防効果をみると…胃がんになる284,188人を予防し,胃がんから65,060人の命を救った。…ピロリ菌除菌戦略は、胃がんの高発生国における胃がん対策にかかる経済的負担を軽減するばかりでなく、将来におこる胃がん罹患数や胃がん死亡数を確実に減らすことができる。…日本は、費用対効果の高いピロリ菌除菌戦略をさらに積極的に導入した胃がん政策を強力に推進して、すべてのピロリ菌陽性の国民が除菌することを実現させ、地球上から胃がんがなくなる未来に向かって、世界をさらに大きくリードすることが求められている。

第76号 胃がんでいのちを落とさないために
北海道医療大学 浅香 正博

本文より … ピロリ感染胃炎の除菌が保険適用になってから8年で約1000万人が除菌されたことにより胃がん死亡者数は…2012年と比較すると15.3%もの胃がん死亡者数の減少を示している。…しかし…80代以降の胃がん死亡者数は増加し続けている…日本では80代以上が総人口の9%を占めてきているので、全がん患者死亡者数の約半数が80代以上になってきたことになる。…わが国の80歳代以降の胃がん検診受診率は平均の1/3以下である。80歳代以降のピロリ菌の除菌はそれ以前の世代に比して1/4以下である。さらに除菌による胃がん抑制効果も30%以下と他の年代より明らかに低い。このような状況を総合的に判断すると超高齢者の胃がん予防はきわめて難しいと考えられる。…単純に計算すると保険の通った2013年から2020年までに約3.7万人もの胃がんで亡くなる人を救ったことになる…わが国のピロリ菌除菌による胃がん撲滅を目指す取り組みに関しては、IARCを始め世界中から評価されるようになってきた。然るに日本政府はこのような動きをほとんど理解していない。…胃がん撲滅にはさらに多くの努力が必要である。ピロリ菌感染者は…すべての人が除菌治療の対象になる。除菌できたことをきっちり確認し、以後は内視鏡による経過観察を続ければ、慢性胃炎が将来、胃がんに進行するリスクを減らせるだけでなく、内視鏡検査で早期胃がんを発見し、完治できるチャンスが増えていくのである。…超高齢者の胃がんの予防はきわめて困難であることが明らかになった。現在、80歳以上の超高齢者では、約22000人が胃がんで亡くなっているからである。…。超高齢者をがんから救う一工夫をがん研究者の総力を挙げて考えなければいけない時期に入ってきたと思われる。

第75号 胃がんリスク検診:ラット・ペプシノゲン研究からABC検診へ
青山学院大学 名誉教授 降旗 千惠

本文より … 1967年に杉村と藤村が、既知の変異原(MNNG) を用いてラット実験胃がん系を確立し、当時、胃がんは、発がん物質により誘発されるという仮説があり、胃がんの生化学的な研究指標は知られていなかったが、他方、消化酵素ペプシンの前駆体PGが知られていた。降旗らが杉村の指導の許、PGを指標としてラット実験胃がん研究を始め、ラット幽門腺部粘膜と胃底腺部粘膜中と、MNNGで誘発した腺がんと腺腫で、4種類あるPG・アイソザイムの主成分PG1タンパク質が減少または消失することを明らかにした。PG1減少幽門腺腺細胞は細胞増殖が増進しており、胃がんの前がん病変であることを示し、一瀬らは、DNAのメチル化がPG1遺伝子の発現減少に関与することを明らかにした。立松らは、腸上皮化生ががん化とは独立した現象であることを示した。1980年代に、三木らは、胃粘膜から免疫学的に異なるPGIとPGIIを精製してラジオイムノアッセイとモノクローナル抗体を用いる検定法を開発し、血清中のPGIとPGIIを同定した。モノクローナル抗体を用いるPGIとPGII測定キットは世界初。ヒトの胃粘膜および血清中のPGIの減少は、胃がんの前がん病変の萎縮性胃炎の指標となること、ヒト胃がんでも、PG遺伝子のメチル化パターンの変化がPG減少に関与していることを明らかにした。2000年代、血清抗Hp IgG抗体と血清PGIおよびPGIIを組み合わせた胃がんリスク・スクリーニング法である「ABC検診」を確立し、学士院紀要Bにレビューを出版した。一瀬らは、4,655人の健康な無症候性被験者(男性)を対象とした16年間の前向き研究を行い、正常対照群A群では胃がん発生率は低く、B群ではハザード比(HR)8.9、C群では17.7、D群では69.7となることを報告し、血清中のPGI低下とHp 抗体価が、Hp 感染者のがん発症の指標となることを明らかにした。国立がんセンターでは、今後10年の胃がん危険度 “胃がんチェックリスト”を発表し、チェック項目の一つにABC検査(ABC法)を入れている。ABC検診とHp 感染者の除菌とその後の定期的な内視鏡検診が胃がん予防に推奨される。

第74号 画像強調内視鏡 Linked-color-imaging による Helicobacter pylori感染のAI診断
公益財団法人 早期胃癌検診協会 中島 寛隆

本文より … H. pylori 感染状態は、感染の既往がない未感染 (uninfected)、現感染(currently infected) に加えて除菌治療後( post-eradication)の3カテゴリーに分類…linked-color imaging(LCI ; 富士フイルム)によるH. pylori 感染の内視鏡AI診断…LCIは消化管粘膜の赤色領域の彩度差・色相差を拡張する画像強調内視鏡で、炎症や粘膜萎縮の診断に有効…上部内視鏡検査を受診した395名(未感染; 141、現感染; 138、除菌後; 116)を前向きに登録…スクリーニング検査において内視鏡の反転操作で胃体部小弯を観察し、白色光(white light imaging: WLI)とLCIの静止画像を連続撮影…6639枚の白色光(WLI)学習画像と、6248枚のLCI学習画像を生成し、WLIに適応したAI(WLI-CAD)と、LCIに適応したAI(LCI-CAD)をそれぞれに試作…AI診断の精度評価には、学習用画像と重複しない120名(未感染、現感染、除菌後を各 40)の検査動画を使用…H. pylori 感染診断についてLCI-CADは、WLI-CADよりも優れた成績を示し…LCI-CADの正診率に注目すると、H. pylori 未感染は84.2%、現感染は82.5%、除菌後は79.2%で…AI(LCI-CAD)は、十分な経験を積んだ内視鏡医と同等の成績であることが判明…将来このシステムが進化すれば胃のサーベイランスやがん検診の有効性を高める可能性がある。

第73号 胃疾患におけるAI診断 胃拡大内視鏡AI画像診断支援システムによる胃がん診断の現状
順天堂大学医学部 消化器内科 准教授 上山 浩也

本文より … 小さな初期の胃がんの内視鏡診断において白色光観察の検出と診断は困難であり、NBI(Narrow Band Imaging:狭帯域光観察、オリンパス)併用拡大内視鏡観察が胃がん診断の正診率の上乗せ効果がある…NBI併用拡大内視鏡における胃がん診断の正診率の向上…NBI併用拡大内視鏡診断における内視鏡医の技量差が挙げられ、AIなどの更なる診断技術の開発が必要…胃疾患におけるAI診断の対象には、胃炎の診断、H.pylori 感染診断、病変の拾い上げ、胃がんの質的診断・深達度診断など多岐にわたり、国内外から数多くの研究報告…自施設では株式会社AIメディカルサービスと共同研究を行い、NBI併用拡大内視鏡画像を学習データとしてAIを活用した内視鏡画像診断支援システムを用いて、NBI併用胃拡大内視鏡AI画像診断支援システムを開発…教師画像として5574枚…のNBI併用胃拡大内視鏡画像を用いて、CNNモデル(ResNet-50)にディープラーニングの手法で学習させ、AI画像診断支援システムを構築…検証用画像は、教師画像とは全く異なる時期の2300枚…のNBI併用胃拡大内視鏡画像を使用し、癌か非癌かの鑑別診断に関して…正診率98.7%…感度98%…特異度100%…陽性的中率100%…陰性的中率96.8%…であり、既報中で最も精度の高いシステムを開発…HeatmapにてAI画像診断支援システムがどの領域に注目していたかを解析…表面微細構造よりも微小血管構築像に注目…内視鏡医の診断に近い可能性が考えられ…今後は…胃拡大内視鏡AI画像診断支援システムのリアルタイム診断に関する多施設共同前向き研究を計画しており、実用化につながることを期待しています。

第72号 和光のラテックス試薬「LタイプワコーH.ピロリ抗体・J」の有用性
がん研有明病院 消化器内科 渡海 義隆

本文より … 2016年、富士フイルム和光純薬㈱はラテックス法キットである「LタイプワコーH.ピロリ抗体・J」(以下L-HP・J)を発売…ラテックス法には、より短時間で結果が得られるという利点…今回はL-HP・Jテストの有用性の検討…ELISA法との比較検討を行い…L-HP・Jテストは汎用の自動分析装置を用いて好きな時に測定が可能で、E-plateと異なり洗浄の工程を必要とせず1検体約10分で測定可能…本検討で用いたキットはL-HP・JとE-plateで、カットオフ値は添付文書にあるようにそれぞれ4U/ml、10U/mlと設定し…ピロリ感染診断は内視鏡所見および尿素呼気試験(UBT)を基に行い…ピロリ未感染症例は、内視鏡所見上萎縮がなく、胃炎の京都分類上活動性胃炎を認めないもの、かつUBT陰性(≦2.4%)のものとし、ピロリ現感染症例は内視鏡上萎縮及び、または、活動性胃炎を認め、かつUBT陽性であるものと定義…期間は2017年9月から2019年2月…ピロリ未感染症例90例、現感染症例90例の合計180例を対象に検討…L-HP・Jは診断精度が担保された検査である…E-plateはL-HP・Jと比較して試験例を有意に陰性と評価する傾向…E-plateは偽陰性率が高い…L-HP・JはE-plateと同等の診断精度を示し、さらにE-plateと比較して十分な感度が得られ、H.pylori現感染症例の拾い上げとして有用なキット…L-HP・Jは迅速で十分な診断精度を有すること、特に感度の面で現感染症例の拾い上げに有用…しかし、偽陰性・偽陽性症例が少数ではあるものの存在することから、内視鏡所見との乖離がみられた際には抗体法以外の検査法を用いて総合的に判断することも重要です。

第71号 がん検診における看護職の役割と重要性
帝京大学 医療技術学部 看護学科 濱島 ちさと

本文より … 診療分野の専門化や技術革新により、医療提供体制は大きな変化を遂げ、多職種連携が求められている。がん検診分野においても、従来から保健師・看護師、放射線技師との連携が重視されてきたが、新たに導入された胃内視鏡検診も例外ではない。…胃内視鏡検診を担うのは多くは地域医師会に所属する診療所であり、日々の診療の合間を縫って検査が行われる。鳥取県米子市の胃内視鏡検診に参加している医療機関へのアンケート調査では、参加医療機関の勤務医師は1人がほとんどであるが、平均看護師数は4.2人と報告されている。…検査医と看護職の連携は内視鏡検査を円滑に進める要となる。胃内視鏡検診に 参加している医療機関においてタイムスタディ調査が行われている。…胃内視鏡検査に費やされる時間は、前作業、検査、後作業に分類され、…検査そのものに対して、前作業、後作業共に2倍以上の時間が必要となり、そのほとんどを看護師が負担していた。…複数内視鏡の装備、全自動洗浄機や専用内視鏡室の設置、説明用DVD活用などにより、看護職の負担軽減を図ることが内視鏡検査の効率化につながる。…胃内視鏡検診の導入により、胃がん検診受診率も回復基調にあり、今後の胃内視鏡検診の普及に期待するところである。…まとめ:胃内視鏡検診の推進には多職種連携が必要であり、中でも看護職の役割は大きい。今後は、内視鏡検査やがん検診に専門知識に関する教育研修を拡大し連携を進めることが、胃内視鏡検診の拡大にも寄与する。

第70号 検診間隔の設定:胃内視鏡検診の検診間隔は延長できるか
帝京大学 医療技術学部 看護学科 濱島 ちさと

本文より … 2015年に国立がん研究センターから公表された「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年度版」により胃内視鏡検診が推奨され、翌年には厚労省の指針改訂に至りました。ガイドラインでは、胃内視鏡検診は50歳以上を対象とし、検診間隔は2年となっています。…韓国では大規模データベースを用いて、胃内視鏡検診の症例対照研究を行い…検診間隔を2年に設定した場合でも、54%の死亡率減少効果が認められ…、4年以上に延長した場合でもその効果は継続することがわかりました。我が国で行われた症例対照研究でも…胃がん診断日から遡ること3年以内に1度でも胃内視鏡検診を受診した場合…有意な胃がん死亡率減少効果を認めました。…胃がん発症リスクについては、国内研究のメタ・アナリシスが行われています。ヘリコバクターピロリ抗体陰性、ペプシノゲン法陰性であるいわゆるA群に比べ、いずれかが陽性であるBCD群では胃がんリスクが増加することが示されています。…内視鏡検診は従来のX線検診よりも感度が高く、より早期のがんを発見することができます。…X線検診よりも検診間隔を延長しても、死亡率減少効果が得られることが知られています。…リスク層別化を内視鏡検診に応用することが考えられています。背景リスク別の検診間隔を設定し、リスク別に検診間隔を延長できるかを検証する、AMEDが全国規模で行われています。…リスクの層別化はこれまでの血清診断だけではなく、内視鏡診断、ピロリ菌除菌歴、個人の背景要因(年齢、家族歴、喫煙など)を考慮し、内視鏡検診に応用可能な新たなリスク層別化を検討しています。

第69号 岐阜県における検診車を用いた集団胃がん内視鏡検診の取り組み
JA岐阜厚生連岐阜西濃医療センター岐北厚生病院 足立 政治

本文より … JA岐阜厚生連は8病院を有する県下最大の医療組織であり、今までにも検診事業などの予防医学に積極的に取り組んでいるが、その一環として国内3台目となる経鼻内視鏡を搭載した検診車を整備した…光源装置は富士フイルムメディカル社製Advancia HDで、23本の細径スコープ(EG-580NW2)を装備している。医療スタッフは最寄りのJA岐阜厚生連病院に勤務する日本消化器内視鏡学会専門医および内視鏡センター看護師を中心に配置…2017年度から導入した山県市(個別検診と検診車による集団検診の併用実施)では受診率は5.0%台から11%台へ飛躍的に向上し、がん発見率や陽性反応的中度は胃X線よりも胃内視鏡が高く、精度の高い検診が実践出来ていた。…今後の課題…メリハリのある政策)が求められる。次に内視鏡検診に係るスタッフ不足である。現在の画一的な対象者設定は改め、ピロリ菌感染の有無による胃がんリスク層別化などによりハイリスク対象者を絞り込んで検診を行うことが重要である。…検診体制広域化(市町村単位でなく都道府県主導の検診体制)による自治体間格差の是正、医療資源の偏在の是正である。我々の検診車による巡回胃内視鏡検診は、この点において非常に有用、…結語:我々の活動は、胃がん内視鏡検診の導入を躊躇する自治体が抱える問題である「内視鏡医不足」、「読影医不足」そして「煩雑な検診体制確立」を同時に解決しうる取り組みである。今後もこのシステムを広く普及させることで医療過疎地区の検診活動の一助となり, 全体での胃がん死亡率減少に貢献したい。また今後、続々と全国で胃内視鏡検診車が展開されることを強く期待している。

第68号 内視鏡検査におけるAI(人工知能)のこれから
ただともひろ胃腸科肛門科 理事長 多田 智裕

本文より … ディープラーニングと高性能化したコンピュータが加わったことにより、第4次産業革命ともいわれるAI革命が始まり、…2015年には、AIは人間を上回る画像識別能力を手に入れ、…2017年1月に内視鏡AIの研究開発を始めました。…胃がんを検出するAIシステムを2018年1月世界で初めて報告し、その検証用静止画における感度は6mm以上の胃癌に対して98.6%でした。…2019年3月…胃がん検出AIが検証用動画においても92.2%の感度であることを世界初で報告、…同年1月、世界初の食道がん検出AI論文、…2017年9月AIメディカルサービスを創業、2021年度中に第一弾の胃がん鑑別AIを上市できるところ。…日本を代表する100以上の医療機関と共同研究を実施しており、質量ともに世界トップクラスのAIの学習に必要なデータを収集・活用し…胃がん…食道がん…大腸のポリープ検出と消化管全てをカバーできるような内視鏡AIを順次上市していく予定。…現場の実情を把握した上での地道な作業の積み重ねの上に実現する…内視鏡AIは、アイデアの目新しさよりも、それをやりきる粘り強さ、根気強さによって世界初の成果に繋がった。…内視鏡AIは患者、医師、医療機関の誰にとってもWin-Winのプロダクトであると同時に、全世界の内視鏡現場で近い将来当たり前のように使われるのもそう遠くない。…内視鏡AIの実用化が進めば、がんの見逃しリスクの低減や、医師の負担軽減、さらには患者の予後改善が期待できる。内視鏡AI研究開発は日本が世界をリードしており、日本発の内視鏡AIが世界の患者を救うようになる日も近い。

第67号 胃がんの死亡統計から考える胃がん対策
京都先端科学大学 健康医療学部 渡邊 能行

本文より … ・・・約5万人と横ばいであったわが国の胃がん死亡者数もようやく減少に転じた・・・現在では65歳以上の高齢者が胃がん死亡の9割近くを占めている・・・これからの胃がん対策・・・高齢者の胃がん死亡者数が増えて、若年世代の胃がん死亡者数はむしろ減少していることは望ましい推移である。出生コホート分析で示したような若年世代での胃がん死亡率の減少はヘリコバクタ・ピロリ菌感染率の減少に大きく依存していることに加え、生活環境や食習慣の変化、診断と治療といった医療の進歩、そして部分的には胃がん検診の影響もあった推移と推察されるが、この推移をさらに推進すること・・・働き盛りの40歳代や50歳代の胃がん死亡者を現在以上に減らす必要があること・・・40歳代や50歳代の胃がんをかかりつけ医の健康管理として濃密に計画的に管理すること・・・高齢者の胃がん死亡に対しては、特に全胃がん死亡者の約1/4を占める余命も比較的長い65-74歳の前期高齢者をターゲットとした取り組みが必要である。以上、世代の現状に応じた、アクセントを変えた取り組みをすることが肝要であり、地域や職域において、いわゆるorganized screeningを推進する必要がある。

第66号 ラテックス法による抗Helicobacter pylori 血清抗体化測定の診断精度の検討
東京大学医学部附属病院 予防医学センター 看護師 高橋 真美

本文より … 血清抗Helicobacter pyloriH. pylori)抗体検査試薬は、栄研化学の「Eプレート‘栄研’H.ピロリ抗体II(E-plate)」が広く用いられていますが、陰性高値に該当する症例へ配慮が 必要な点、多数の検体処理に向かない点で、自動分析装置で短時間に多くの検体処理を可能とする汎用性が高いラテックス法に切り替える動きが加速しています。・・・今回、H. pylori 感染診断の血中抗体測定試薬のスタンダードであるE-plate を対照に、ラテックス法(「LZテスト‘栄研’H.ピロリ抗体(栄研L)」、「LタイプワコーH.ピロリ抗体・J(和光L)」)両者の診断精度を検討しました。・・・上部消化管内視鏡検査を実施した899名・・・年齢の中央値は43歳・・・抗H. pylori 抗体価のカットオフ値は、添付文書通り、E-plateと栄研Lでは10 U/ml以上を、和光Lでは4 U/ml以上を陽性とし、また、日本ヘリコバクター学会による注意喚起の内容を踏まえEplateでは3 U/ml以上を陽性とした検討も併せて行いました。・・・キット間での不一致率の検定において、栄研LはEplate10との間に有意差を認めず、E-plate3とは有意差を認めました。また、E-plate3に比べ、栄研Lの陽性一致率や内視鏡的H. pylori 感染診断に基づく感度は有意に低く、偽陰性率・偽A群率は有意に高値でした。一方、和光Lは感度・偽陰性率・偽A群率のいずれもEplate3と有意差を認めませんでした。

第65号 偽陰性胃癌 ーAIの活用も含めてー
がん研有明病院 消化器内科 平澤 俊明

本文より … 胃がんリスク層別化検査と胃がん内視鏡検診の全国的な普及に伴い、さらなる胃癌の早期発見、早期治療が求められる時代となった。胃癌の早期発見に最も有用な検査が内視鏡検査であることは疑う余地はないが、内視鏡検査にも一定の頻度で見逃し、つまり“偽陰性”が存在する。…第一の原因として、胃内の不充分な観察があげられる。…次に胃癌の認識の問題がある。…この胃癌の検出能力は医師によって大きな開きがある。…機械学習、ディープ ラーニングの技術革新により、ここ数年でAIの能力は飛躍的に進化した。AIの得意な分野は画像認識であり、この領域ではすでに人間の能力を超えていると言われている。…このプロトタイプのAIは6mm以上の胃癌を98.6%の感度で検出した。…胃癌を検出する感度、特異度は、AIは58.4%、87.3%であり、内視鏡医は31.9%、97.2%であった。…病変が画面内に写り込んでからAIが認識するまでに要した時間はわずか1秒(中央値)であった。…胃全体が網羅的に観察されたかどうかを確認するAIも開発されており、観察漏れによる胃癌の見逃しを減らす効果が期待される。…内視鏡診断をサポートするAIは偽陰性癌の対策に有効なツールとして有望視することができる。

第64号 対策型胃がん検診における胃がんリスク層別化検査のゲートウェイとしての有用性
マールクリニック横須賀 院長 水野 靖大

本文より … ・・・・内視鏡検査が個人の胃がんを発見する上で、現在最も優れた検査であることに異論を唱える消化器科医はいないと思うが、・・・・内視鏡検査の前にリスク検査を行うと対象が集約される。横須賀市の場合、受検者のうち46%がB, C, D群なので、精密検査として内視鏡検査を行う数は全受検者の半分以下に抑えられる。この集約された対象に精検として行われる内視鏡検査の陽性反応的中率は1.38%である。仮に、1次検診として内視鏡検査を行う場合の陽性反応的中率は、今回のがん発見率に近似するはずなので0.48%となる。リスク検査で対象を適切に集約すると、一次検診として最初から内視鏡検査を行う場合に比べて約3倍効率的な(つまりコストは節約でき、マンパワーは温存できる)検査になる。さらに、B, C, D群の全てにおいて陽性反応的中率は、いずれもがん発見率を上回っている・・・・私が考える胃がん検診はこうだ。まずはより若年で低侵襲的に広くピロリチェックを行う。陽性者には内視鏡を行った後に除菌を行い、その後は粘膜の萎縮の程度に合わせた間隔で内視鏡検査を行っていく。陰性者に対しては、あるいは対策型検診としての内視鏡検査は不要かもしれない。

第63号 ピロリ感染血清診断薬試薬(キット)の選択範囲が拡大しました。ラテックス法の選択と運用上の留意点
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療・研究機構 理事  伊藤 史子

本文より … H. pylori 抗体測定試薬には測定原理の異なる酵素免疫測定法とラテックス免疫比濁法(以下ラテックス法)によるものがあり 現在、試薬メーカー3社がそれぞれ測定原理の異なるキットを販売しているので6種類キットが流通しています。ラテックス法は汎用機で短時間に大量の検体を測定できるので低コストであり、急速に市場を広げています。・・・・6試薬の同時測定の結果・・・・現感染の精度は栄研Eおよび栄研Lにおいてカットオフ値が添付文書と乖離していた。・・・・これまでのいずれの研究成績からも和光およびデンカ製試薬には陰性高値は認められない。以上の研究結果から、当NPOとしては、ABC検診の一次スクリーニングにはラテックス法の試薬としてLタイプワコーH.ピロリ抗体・J および H.ピロリーラテックス「生研」を推奨します。・・・・検査機関が試薬を変更する場合には事前にユーザーへの連絡が不可欠です。検診の実施主体が受診者に通知する結果通知には、ABC(D)E群判定、検査の実測値、検査値の判定基準、キット名を記入することが必須事項となります。・・・・検査値は胃がんリスク判定を左右します。検査機関が適切な試薬を用い、正しい検査結果を得るための精度管理は極めて重要です。「検診は受診者動向も含め生きて動いているもの」です。検診の実施主体、委託医療機関等関係者による検診検討会等を開き、定期的に検診の実施状況や結果を評価することで事業の円滑な運営と質の維持が可能になります。

第62号 わが国から胃がんを撲滅するための戦略
北海道医療大学 浅香 正博

本文より … 胃がんはわが国で年間5万人が亡くなっており、全がん中死亡者数で3番目となっている。現在では日本における胃がんの98%がピロリ菌によって引き起こされていることが明らかになってきており、一言で言えば胃がんの大半はピロリ菌によって引き起こされる感染症といってよい。…わが国の胃がんの撲滅において重要なのは、ピロリ感染胃炎の総括班を厚労省に設置して、胃がん撲滅の司令塔としての役割を果たしてもらうのがよいと考える。その方策として、ピロリ感染胃炎を五類感染症に指定してもらう。次いでピロリ菌検査の無料化を行い、胃炎医療コーディネーターを育成するという三つの施策を提案したい。この施策により、ピロリ感染胃炎の診断、治療へと住民を導くこと可能と思われる。わが国のピロリ感染胃炎対策をどの地域でも同じように受けられるようにすることが重要である。この提案は肝炎対策と比較すると費用がほとんどかからず、肝炎対策以上の効果が期待される可能性が高い。

第61号 AIを活用した胃がんリスク層別化と新たな胃がん検診法の提案
名古屋大学大学院医学研究科 消化器内科学 藤城 光弘

本文より … 極めて効率的なリスク層別化法であるが、HP 除菌例の増加による偽A群の増加の流れは避けられず、今後はABC検診法を進化させた検診法の開発を模索する必要がある。近年、AIの消化器内視鏡分野への発展は目覚ましく、胃がん診療においても様々な検討が開始されている。13,584枚の胃がん内視鏡画像を用いて、畳み込みニューラルネットワークによる深層学習で開発されたAIは、2,296枚のテスト内視鏡画像のすべてを47秒(1枚あたり0.02秒)で診断し、胃がん診断の陽性反応的中度30.6%、感度92.2%であったことが報告されている。・・・内視鏡検査においては、リアルタイムに内視鏡画面上にがんが疑われるところをアノテーションしてもらうAIが活躍し、がんの存在診断をアシストしてくれるものと思われる。

第60号 統計から見た がんのリスク層別化の可能性
国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計・総合解析研究部 片野田 耕太

本文より … 胃がんについては、ピロリ菌抗体検査(Hp)とペプシノゲン値検査(PG)の組み合わせを用いたABCD群別に、生涯累積リスクを算出した結果が報告されている。…A群、B群、C群、およびD群の生涯累積胃がん罹患リスクは、男性でそれぞれ2.4%、10.8%、26.7%、および35.5%、女性でそれぞれ1.2%、5.5%、13.5%、および18.0%である。…特定の部位のがんのリスクがこれほど大きくなることは、ピロリ菌による胃がんリスクの大きさを物語っている。…死亡率で同様に男女別生涯累積リスクを算出した結果であり、男性でA、B、C、D群それぞれ0.8%、3.6%、9.0%、および12.0%、女性でそれぞれ0.4%、1.7%、4.2%、および5.7%である。…男女とも除菌後のリスクは一つ下の群(B群の場合A群、C群の場合B群)のリスクより高いままである。除菌後の胃がん発症リスクの減少効果は、萎縮性胃炎の有無などによって効果が異なることが指摘されている。リスク層別による胃がん予防を実装してゆく際の課題として、年齢や胃粘膜の状態などによる条件について、除菌による効果を最大化する方策を検討することが必要だと考えられる。

第59号 H.ピロリ-ラテックス「生検」の胃がんリスク判定の層別化における有用性
東京大学医学部附属病院 消化器内科 権頭健太

本文より … デンカ生研株式会社のLatex法を用いた検査試薬、H.ピロリ-ラテックス「生研」(Denka Ltx)に関して は、E-plate(Cut off値10)と比較した我々の先行研究において十分な精度が確認されたが、近年検診におい てE-plateのCut off値を3U/mlにするべきという議論があり、今回E-plate(Cut off値3)と精度の比較を行っ た。また、そのうえで胃がんリスク判定の層別化において、Denka Ltxが十分な精度を有しているか検討を 行った。‥‥血清抗HP抗体検査試薬Denka Ltxは、内視鏡画像所見によるHP感染診断を基準とした場合、E-plateと比 較してHP感染診断の精度に有意差を認めず、また、HP感染診断・ABC法で層別化を行った各群間で累積 胃がん発症率に有意差を認め、ABC検診での胃がんリスク判定の層別化における有用性が示された。

第58号 厳密なピロリ菌診断に基づくピロリ(Hp)抗体6キット同時測定評価
青山クリニック(胃大腸内視鏡/IBD)理事長・院長 青山伸郎

本文より … 今後、簡便なラテックス法へ急速に移行すると考えられるので、現在本邦で使用可能な抗体の的確な評価が急務であり、…3社、先行法とラテックス法の抗体価分布を比較したところ、W-SとW-L、D-E とD-Lの間には各々有意な抗体分布差を認めなかったが、未感染で3U/mL未満になる割合が E-E 95% とE-L 81%と既報9) 同様有意な差を認めた…E-L法=「ラテックス法LZテスト‘栄研’H. ピロリ抗体」ではE-E法と異なった解釈をする必要がある。すなわち栄研のキット使用時にはどちらのキットを使用しているのかの確認が必須である。…未感染に対するRUT陽性現感染の精度は3社のうち栄研の2法は、ROC(受信者動作特性曲線)値とコマーシャルのCut off(添付文書)と乖離していた。各々のキットCut off未満のRUT陽性現感染(=いわゆる陰性高値)は、E-E 10%、E-L 12%存在したが(=陰性高値あり)他の4キットではいずれも約2%にとどまった(=陰性高値なし)…。抗体は直前の抗菌作用薬剤に影響を受けず採血で簡便に測定できるので検診には非常に有用だが、全員除菌時代になり、除菌はRUT,UBT,便抗原などのリアルタイムの感染状態を評価できる検査で現感染を確認して行うべきである。抗体単独で行ってはならない。

第57号 胃癌リスク評価ツールの作成とその検証~久山町研究における胃がんの疫学調査より~
九州大学 衛生・公衆衛生学、病理機能内科学 飯田真大

本文より … 1988年(昭和63年)に久山町健診を受診した40歳以上の住民のうち、胃がんや胃切除の既往がない2,444人(男性1,016人、女性1,428人、平均年齢58歳)を14年間追跡した成績を用いて、胃がん発症予測モデルを作成しました(モデル作成コホート)。 14年間の追跡期間中に90人(男性66人、女性24人)が胃がんに罹患しました。 胃がん罹患と関連する危険因子について多変量解析を用いて解析した結果、統計学的に有意水準を満たしたのは年齢、性、H. pylori抗体とペプシノゲン検査の組み合わせ(ABC法)、HbA1c、喫煙の5項目でした。

第56号 胃がんリスク層別化検査を導入した胃がん検診の費用対効果の推定
新潟医療福祉大学 医療経営管理学部医療情報管理学科 齋藤翔太

本文より … 胃がん検診対象者の状態遷移を反映したマルコフモデルを構築し、胃内視鏡検査のみによる胃がん検診(胃内視鏡検診)と胃がんリスク層別化と胃内視鏡検査を組み合わせた胃がん検診(ABC検診)の2通りについて患者予後のシミュレーションを行った。・・・コホートシミュレーションの結果、40歳集団に対する胃内視鏡検診の期待費用と期待生存年が276,561円、25.50年であるのに対し、ABC検診は128,970円、25.55年であった。リスク層の構成比が異なる50歳集団、60歳集団の全てにおいてもABC検診は生存年を延長しつつ、胃がん関連医療費を削減した。

第55号 胃がん検診の現状と問題点
公益財団法人早期胃癌検診協会 理事長 榊 信廣

本文より … 胃がん検診ガイドライン2014 年度版では対策型胃がん検診には認められなかった が、内視鏡検診の質を保つためにも胃がんリスクを考慮した絞り込みは不可欠である のは言うまでもない。JPHCのコホート研究でも胃癌発症に深く関与する因子は年齢と H.pylori感染であることが報告されており、現実的対応として胃がんリスク層別化検 査(ABC検診)を併用した内視鏡検診が望まれる・・・H.pylori 感染者が年々減少し ていることは広く知られているが、胃がん発症リスクが極めて低いA群が既に職検診 対象者の3/4を占めるという実態を、胃がん検診においても無視はできない。特に胃 がん内視鏡検診において、胃がんリスクを考慮した絞り込み、すなわち胃がんリスク 検診の不可避であることを強調しておきたい。

第54号 ラテックス免疫比濁法及び化学発光酵素免疫測定法を用いた血清Helicobacter Pylori抗体の有用性
品川胃腸肛門内視鏡クリニック 望月 暁 

本文より … 胃がんリスク層別化検査(ABC分類)では、抗Helicobacter pylori(Hp)抗体とペプシノゲン(PG)法がともに陰性であるA群は、一般的にはピロリ菌感染のない健康的な胃と判定されているが、既感染例や現感染例も一定の頻度は含まれており、いわゆる「偽A群」が存在する。血清抗Hp抗体測定は、「Eプレート栄研H.ピロリ抗体Ⅱ」(E-plate抗体)が頻用されているが、陰性高値(3.0-9.9U/ml)の場合は現感染例や既感染例が相当数含まれるため、判定時に注意が必要とされる。今回、和光純薬工業発売の血清HP抗体、ラテックス免疫比濁法を用いた「LタイプワコーH.ピロリ抗体・J」(Wako Lxt抗体)、および、化学発光酵素免疫測定法を用いた「スフィアライトH.ピロリ抗体・J」(Wako CLEIA抗体)の有用性について評価し、偽A群について検討したので報告する。

第53号 高崎市におけるLタイプワコーH.ピロリ抗体・Jを用いた胃がんリスク層別化検査(ABC分類)の運用法
医療法人和泉会 乾内科クリニック 院長 乾 正幸

本文より … 近年、Eプレートのような専用測定装置を必要とせず、他の生化学検査と同じ汎用測定装置で簡便かつ安価に測定できるラテックス免疫比濁(LIA)法を原理とする血清Hp抗体検出キットとして、LタイプワコーH. ピロリ抗体・J(富士フイルム和光純薬)、H. ピロリ-ラテックス「生研」(デンカ生研)、LZテスト‘栄研’H.ピロリ抗体(栄研化学)が使用できるようになった。自施設でのLタイプワコーH. ピロリ抗体・Jの試験的研究結果に基づき、高崎市では2016年度より胃がんリスク検診(ABC分類)に用いる血清Hp抗体検出キットをEプレートからLタイプワコーH. ピロリ抗体・Jに変更した。今回は、自施設での検証を踏まえ、ABC分類2016年度改訂版2)に準じた「LタイプワコーH.ピロリ抗体・Jを用いた胃がんリスク層別化検査(ABC分類)の運用法」を報告する。

第52号 地域で長年実践された胃内視鏡検診の成果
長崎みなとメディカルセンター市民病院 消化器内科 本田 徹郎

本文より … 胃がん死亡率減少効果の科学的根拠が示されつつある胃内視鏡検診は有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン(2014年度版)において対策型胃がん検診として推奨されたこともあり各地域でその導入が開始されている。長崎県上五島地区は1996年より対策型胃がん検診に内視鏡検査が導入された先駆的な自治体であり、2004年以降は完全に内視鏡検診に移行し現在においても継続されている。今回、長年にわたり地域で実践されてきた胃内視鏡検診の成績を報告する。

第51号 佐賀県における若年者からの胃がん撲滅プロジェクト
佐賀大学医学部小児科 未来に向けた胃がん対策推進事業センター 垣内 俊彦

本文より …  胃がんの大きなリスク要因の一つは、ピロリ菌の感染です。2014年にWHO(世界保健機関)は「胃がんの主な要因はピロリ菌であり、胃がんの80%はピロリ菌による」と報告しました。胃がんを予防するためには、ピロリ菌の感染予防が確実に実施できない現況の中では、感染が確認された場合はピロリ菌を除菌することが肝要です。 新たな胃がん予防の手段として、若年者へのピロリ菌感染検査および除菌が全国各地で始まっています。ピロリ菌感染後なるべく早期に除菌することが、胃がん抑制効果を高めることが判明しています。佐賀県でも平成28年度から、県内すべての中学校・特別支援学校の中学3年生を対象にピロリ検診を開始しました。ピロリ菌の感染検査から除菌、除菌判定までを佐賀県からの全額公費助成でおこなうもので、都道府県単位での実施は全国初のことで、注目を集めています。

第50号 小さな町の5年間の「胃がんリスク層別化検診(ABC検診)」の取り組み
小笠原内科消化器科クリニック 院長 小笠原 実

本文より … 北海道の福島町は人口 4,500人以下の津軽海峡に面した小さな町で、胃がん標準化死亡比(SMR)は男性が 153.2、女性は 101.9 で、ともに全道平均(男性93.6、女性90.6)を大きく上回っているため、町の保健福祉課は 2012年(H24年)から胃がんリスク層別化検診( ABC検診)を導入した。胃がん検診率・精密検査(精検)受診率および胃がん発見率などを5年間にわたって検討したので報告する。

第49号 鎌倉市での胃がん検診と今後の課題
鎌倉市医師会 副会長 山口 泰

本文より … 当市の胃がん検診は従来、5年ごとに医療機関で行われる直接撮影の個別検診と、それ以外の年齢時に行われる外部委託による間接撮影の集団検診がX線検査で行われて来た。個別検診が行われた最終年付近の平成24、25年度を見ると、6千人弱の市民がバリウムを飲み10人前後の胃がん患者が発見されていた(平成26年度は集団検診のみ)。胃がんの発見率は0.1%強と低迷し、もう少し効率のよい胃がん検診ができないかと、市とも検討し、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」で胃がん検診の検査項目として胃内視鏡検査を加えるとの提言が行われる前であったこともあり、平成27年度より胃がんリスク検診(ABC検診)を鎌倉市独自事業として行なっている。

第48号 新たな胃がん検診 導入評価報告
社会医療法人神鋼記念会 神鋼記念病院健診センター長 木村 秀和

本文より … 神戸製鋼所健康保険組合(以下、神鋼健保)で従来行っていた胃がん検診は、定期健康診断に合わせて胃部X線間接撮影を行う方法で実施しており、受診率は毎年約8割と高かった。しかしながら、胃がん・食道がんによる被保険者の死亡はほぼ毎年発生していた。そこで、胃がんの早期発見率を高めることにより胃がん死亡をなくしていける検診方法について、神鋼健保・事業主・実施医療機関とともに見直しを行った。

第47号 胃がんリスク層別化検査(ABC分類)これからの課題
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構 事務局

本文より … 2016年9月「ABC分類運用ワーキンググループ(代表世話人・井上和彦)」は、ABC分類におけるEプレート‘栄研’H.ピロリ抗体IIの判定基準を従来の10U/mlから3U/mlに引き下げることを提案しました。判定基準の変更で「A群問題(A群に、胃がん有リスクのピロリ菌現感染者、感染既往者が混在する問題)」の解決に一歩近づくものの、現在検診現場では過渡期に伴う混乱が生じているようです。今号では、日ごろNPOに寄せられる質問に回答しながら今後の課題を整理します。

第46号 町田市胃がんリスク検診(ABC検診)の現状
町田市医師会 公衆衛生副担当理事 玉川クリニック院長 関 盛仁

本文より … 町田市は人口42.8万、高齢化率25.7%、東京都多摩南部の住宅都市である。毎年男性100人、女性50人、計150人程度が胃がんで死亡している。推定される罹患者数は毎年400人ほどであろうか。 2009 – 2013年度の胃X線検査による胃がん検診は、毎年の受診者数約3000人、受診率2%に過ぎず、発見胃がんは1 – 6人で、胃がん発見率は0.12%、市の決算額からは、胃がん発見1人当たり費用は約380万円であった。精密検査費用を1件16390円とすると、それを含めての1人当たり費用は424万円である。

第45号 ピロリ菌抗体価・ペプシノゲン検査の組み合わせは胃がん罹患の予測に有用 -久山町研究から-
九州大学大学院医学研究院 病態機能内科学 池田文恵

本文より … 胃がんは様々な要因から発生するとされていますが、なかでも、ピロリ菌とその持続感染から引き起こされる萎縮性胃炎が、胃がんの強力な危険因子であることはご存じのとおりです。ピロリ菌抗体価とペプシノゲン検査の組み合わせからなるABC分類により、個々が胃がんにかかる可能性が高いのかどうか判定できるとされていますが、この点について、統計学的な手法を用いて検討した報告はありませんでした。そこで、今回、福岡県久山町で継続中の長期間の追跡調査の成績を用いて、検討を行いました。

第44号 胃がんのリスク層別化について
国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部 笹月 静

本文より … がん予防策・検診には利益とともに不利益も存在するということは忘れられがちです。いずれも健康人に提供されるものである以上、不利益は最小限でなくてはなりません。がんの予防・危険因子に関するエビデンスが蓄積されることにより、確立した要因から、がんのリスクをその高低で分類できるようになってきました。近年では胃がんにおいてはピロリ菌感染およびペプシノーゲン値に基づくいわゆるABC分類が注目されています。 これまでにABC分類とその後の胃がん罹患との関連について検討した前向き研究は4件あり、これらを統合したメタ・アナリシスによるとA群を基準としたときのB, C, D群の胃がん罹患の危険度はそれぞれ4.47倍 (95%信頼区間: 1.83-10.03)、11.06倍 (4.86-25.58)、14.78 倍(6.46-38.21)でした。

増刊号 (ABC分類)2016年度改訂版 胃がんリスク層別化検査の提案
一般財団法人涼風会健康官営センター・涼風会旭ヶ丘病院 井上和彦

本文より … 2015年6月に日本ヘリコバクター学会から「Hp抗体が陰性であっても低値でない場合(Eプレート‘栄研’H.ピロリ抗体Ⅱでは3U/mL以上10U/mL未満)は胃がんリスクがないと判定しないで下さい」と注意喚起された。 受診者が不利益を被らないように、現状にあった新たなABC分類の運用法を早急に示す必要があり、栄研化学株式会社の後援により、学会などの団体を母体としない「ABC分類運用ワーキンググループ」を立ち上げた。そして、ABC分類におけるHp抗体の判定基準の見直しを含め、今後の運用法などについて検討した。協議した内容についてオープンフォーラムを開催し、広く意見を頂戴したうえで、新たなABC分類の運用法について提案する。

第43号 人間ドック上部消化管内視鏡検査におけるABC検診ー特にA群胃癌についてー
富士重工業健康保険組合 太田記念病院 中村 哲之

本文より … 胃癌早期発見を目指すスクリーニング検査(上部消化管X線透視(UGI)・上部消化管内視鏡(EGD))の普及と生活環境の改善(ピロリ菌(Hp)除菌、減塩、禁煙等)により、近年、本邦における胃癌の罹患率・死亡率はともに減少傾向にあるが、2011年の悪性新生物罹患率では男性1位・女性2位、2014年の同死亡率は男性2位・女性3位であり、いまだ高位を占めている。 2014年に改訂された“ 有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン ”では、新潟県・鳥取県の症例対照研究や韓国のコホート内症例対照研究等で、EGD検診による胃癌の死亡率減少効果が示されたことにより、胃内視鏡検査の推奨グレードが“ I(対策型検診では推奨しないが、任意型検診では適切な説明に基づき個人レベルで検討する)”から“ B(対策型検診・任意型検診としての実施を推奨する)”へ変更された。

第42号 ラテックス免疫比濁法を用いた新しい血清Helicobacter pylori抗体キットの有用性
乾内科クリニック 乾 正幸

本文より … 血清Helicobacter pylori (Hp) 抗体測定は簡便で非侵襲的なHp感染診断法であり、胃がんリスク(ABC)検診にも用いられています。日本国内では日本人株由来の血清Hp抗体検出キットが適していると言われており、今まではEプレート‘栄研’H. ピロリ抗体Ⅱ(栄研化学)(以下、Eプレート)が汎用されてきました。Eプレートのカットオフ値は10.0 U/mLですが、最近では10未満の場合でもHp 現感染やHp 既感染のことがあることもわかってきました。つまり、本来はHp 未感染であるはずのABC検診におけるA群の中にもHp 現感染やHp 既感染が混入しているということであり、ABC検診における由々しき問題となっています。そのため、日本ヘリコバクター学会ではEプレートで3以上10未満(陰性高値)となった場合は他のHp 検査を考慮するよう注意喚起を出しています。

第41号 ヘリコバクター・ピロリ感染がなぜ今問題なのか -若年時からの胃癌予防を考えて-
医療法人協和会第二協立病院 院長 福田能啓

本文より … ヘリコバクター・ピロリの感染率が減少している。しかし、胃癌による死亡者数は男女ともに相変わらず高いままで推移している。高齢化が進み、団塊の世代が60歳を越えるにつれて、この世代からの胃癌発症が増加してきている。すなわち、幼少期に感染したヘリコバクター・ピロリが胃粘膜に炎症を起こし続けて、50-60年経った時期に胃癌を発症しはじめると考えると理解しやすい。ヘリコバクター・ピロリに感染するとほとんどの場合、自然に除菌されることはなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病変を発症させない場合でも、慢性活動性胃炎は持続し、萎縮性胃炎、腸上皮化生を含めた胃癌発生母地を形成する。加えて、明らかな萎縮性胃炎が出現していない若年者に、スキルス胃癌を発生させる「リンパ濾胞性胃炎」、いわゆる鳥肌胃炎が注目されるようになってきた。

第40号 大田原市(栃木県)における胃がんリスク(ABC)検診について -3年間の総括と運用について-
増山胃腸科クリニック 院長 増山 仁徳
第39号 宮崎市 胃がんリスク検診(ABC検診)の現況
宮崎市郡医師会成人病検診センター 尾上耕治
第38号 品川区胃がんリスク検診2年間の報告
荏原医師会胃がんリスク検診検討委員会代表 瀬底正彦
第37号 目黒区胃がんリスク(ABC)検診データベースに基づく血液検査値の解析(第一報)
認定NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構 伊藤史子
第36号 胃がん検診の終わりの始まり
東京医科大学消化器内科学分野  後藤田卓志
第35号 内視鏡による胃がんリスク評価 ~ 胃がん予防対策を含めて
北海道大学病院光学医療診療部 加藤元嗣
第34号 食道がんリスク検診(フラッシングと飲酒・喫煙の問診によるリスク評価)
国立病院機構久里浜医療センター 臨床研究部長 横山 顕
第33号 北里大学病院・北里大学東病院における胃がんハイリスク検診(ABC検診)
北里大学医学部消化器内科学・北里大学病院健康管理センター 竹澤三代子
第32号  藤枝市の新しい「ピロリ菌にがんリスク判定」検診について
志太医師会 検診担当理事 花岡 明宏
第31号 横須賀市における胃がんリスク検診について
横須賀市医師会胃がん検診担当理事、中央内科クリニック院長 松岡 幹雄
第30号 胃がんリスク(ABC、胃炎)検診をめぐる最近の話題
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構 副理事長、 乾内科クリニック院長(高崎市医師会) 乾 純和
第29号 ピロリ菌感染症の学校検診への導入
地方独立行政法人長野県立病院機構 長野県立須坂病院内視鏡センター 信州大学医学部消化器内科 赤松 泰次
第28号 西東京市医師会における胃がんハイリスク検診
西東京市医師会公衆衛生担当理事/西東京市消化器医会 永田 靖彦
第27号 H.pylori 胃炎に対する適用拡大の意義と問題点
国立国際医療研究センター 国府台病院 上村 直実
第26号 ヘリコバクターピロリ除菌後の胃がん
北海道大学病院 光学医療診療部 間部 克裕
号外 認定NPO法人になりました
第25号 ヘリコバクターピロリ菌感染胃炎への除菌療法の保険適用拡大による経済効果
アスクオオワダ代表 乾内科クリニック 大和田 進
第24号 メタボもがんも同時に克服しましょう
伏見医師会副会長 古家医院院長 古家 敬三

特定健康診査に併せて行う胃がんリスク検診(ABC検診)の有用性

第23号 胃がんを遠ざける生活習慣
国立がん研究センター/がん予防・検診研究センター 予防研究部 津金 昌一郎
第22号 ABC分類、A群をめぐる問題
第21号 ピロリ菌ってどんな細菌ですか?
杏林大学医学部第三内科 高橋 信一
第20号 世界初の経鼻内視鏡専用検診車の活動報告
池田病院・附属健康管理センター副院長 外科・内視鏡科 池田  聡

~一次検診・出張型人間ドックからABC検診の二次検査まで~

第19号 ピロリ菌感染の分子疫学
大分大学医学部環境・予防学講座/ベイラー医科大学消化器内科 山岡 吉生
第18号 「胃がんリスク検診で地域の胃がん死亡を減らしましょう」
NPO法人 日本胃がん予知・診断・研究機構 伊藤 史子

~もし、あなたの町でリスク検診を採用しようとすると~

第17号 ピロリ菌はいかにして胃の細胞をがん化するのでしょうか
東京大学大学院医学系研究科・微生物学分野 畠山 昌則
第16号 わが国からの胃がん撲滅をめざして
北海道大学大学院消化器内科 浅香 正博
第15号 ABC検診と経鼻内視鏡検査を組み合わせた新しい胃がん検診
東京医科大学病院内視鏡センター 河合  隆
第14号 新潟市における胃がん内視鏡検診について
県立がんセンター新潟病院 小越 和栄
第13号 早期胃癌に対する内視鏡治療
慶應義塾大学医学部腫瘍センター 低浸襲療法研究開発部門 矢作 直久
第12号 血液検査で胃の”健康度”(胃がん危険度)がわかります
川崎医科大学総合臨床医学 井上 和彦
第11号 胃がん検診対象の血清によるプレ・スクリーニング
神戸薬科大学医療薬学研究室 水野 成人
第10号 新ガイドラインによるピロリ菌除菌の最前線
杏林大学医学部第3内科 高橋 信一
第9号 胃がんの死亡統計から考える胃がん対策
京都府立医科大学大学院医学研究科 地域保健医療疫学教授 渡邊 能行
第8号 住民は血液検査で胃がんの発症リスクを知ることを望んでいます
伊藤労働衛生コンサルタント 事務所長(元目黒区保健所長) 伊藤 史子

住民検診に胃がんリスク検診を導入しよう

第7号 任意型(人間ドックなどの)内視鏡検診で胃がんの死亡率が減少しました
国家公務員共済連合会 横浜栄共済病院 細川  治
第6号 何を選択しますか?  あなたの胃がん検診
越谷市医師会 胃癌大腸癌検診委員会 藤田 安幸
第5号 H.pylori 除菌による胃がん予防は どこまで可能か?
北海道大学大学院消化器内科 病院長 浅香 正博
第4号 血清ペプシノゲン値測定による新しい除菌判定法
浜松医科大学臨床研究管理センター 准教授 古田 隆久

ペプシノゲンI/II比の除菌前後の変化率によるヘリコバクター・ピロリ除菌判定方法について

第3号 これまでの胃がん検診、これからの胃がん検診
高崎市医師会 がん対策・検診委員会 乾  純和

胃がん検診改革、高崎医師会の挑戦

第2号 胃がん予防のためのピロリ除菌療法
国立国際医療センター 内視鏡部 上村 直実
第1号 胃がんハイリスク検診ってなあに?
設立準備号 力をあわせて日本の胃がん対策を変革しましょう!

書籍

胃がんリスク層別化検診(ABC検診)
~胃がんを予知・予防し、診断・治療するために~ 認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構 理事長 三木一正編,南山堂(東京),2019,p1~234
http://nanzando.com/books/21281.php
胃炎をどうする? 第2版
ABC胃がんリスク層別化で 内視鏡で X線で -検診・診療・予防- 三木一正 編, 日本医事新報社(東京),2017,p1~267
胃炎をどうする?
血清ABC検診で 内視鏡で X線で -検診から対策まで- 三木一正 編, 日本医事新報社(東京),2015,p1~239
胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル・改訂第2版
~胃がんを予知して予防するために~ 認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構 編,南山堂(東京),2014,p1~233
http://www.nanzando.com/books/42062.php
 
胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル ―胃がん撲滅のための手引き―
NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構 編, 南山堂(東京),2009, p1-71