ホーム > 胃がんリスク層別化検診(ABC検診)Q&A

監修 三木 一正(認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構)

胃がんリスク層別化検査は、どこで受けられますか?

採血検査ができれば、全国どこの医療機関(病院、クリニックなど)でも受診できます。胃がんリスク層別化検査は、2項目の採血検査(血清ペプシノゲン値とピロリ菌IgG抗体価)を組み合わせて判定します。

胃がんリスク層別化検査は何歳から実施できますか?

胃がんリスク層別化検査に年齢制限はありませんが、成人が職域の一般検診や特定検診の採血検査と同時に実施するとよいでしょう。採血検査ですから乳幼児には勧めません。未成年は、ピロリ菌が陽性でも、まだ胃粘膜萎縮が進んでいることが少なく胃がんの可能性は低いので、ピロリ菌検査のみ実施し、陽性の場合、内視鏡検査や除菌治療を勧めます。高齢者(特に後期高齢者世代)はピロリ菌感染率が高く、加齢によりピロリ菌抗体が陰性化している場合があるので、胃がんリスク層別化検査だけでは不十分です。A群でも一度は内視鏡検査を実施し、画像所見でピロリ菌感染の有無や既往・胃粘膜萎縮を判断するとよいでしょう。

胃がんリスク層別化検査は一生で1度受診すればよいというのは本当ですか。

はい、胃がんリスク層別化検査は一生に1度、受診します。ただし、その後のフォローアップが大切です。B群、C群、D群と診断されたら、内視鏡検査を受けピロリ菌除菌療法を行います。ピロリ菌除菌後も胃がんのリスクは残りますので、定期的な内視鏡検査が必要です。A群でも自覚症状のある人、および過去5年以内に画像検査を受けていない人は、内視鏡検査を受ける必要があります。

胃がんリスク層別化検査の対象からはずすべき人、注意すべき人はいますか?

1 胃、その他の消化器系に症状がある人。
2 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など治療中の人。
3 胃酸を抑える薬PPI(プロトンポンプ阻害薬;タケプロン、オメプラール、パリエット、ネキシウム)およびタケキャブなどを服用中の人。
4 胃を切除した人。
5 慢性腎不全の人。
6 ピロリ菌の除菌療法をした人。
7 抗生剤を長期に服用する病気(肺炎、中耳炎、蓄膿症など)の既往歴がある人
8 免疫不全・低下状態の人、ステロイド服用中の人
上記を問診で確認し、1~6に該当する人は胃がんリスク層別化検査の対象からはずします。「ピロリ菌除菌療法をした人」は、除菌の成功・不成功に関係なく、胃がんのハイリスク群として定期的な内視鏡検査が必要です。除菌成功者に定期的な内視鏡検査を勧めるのは、指導上難しいですが、「除菌療法で胃がんリスクの軽減は期待できるが、未感染者同様の胃がんリスクまでは下がらない。除菌後の胃がんも少なからず存在する」ことを、受診者に伝えましょう。抗生剤を長期に服用する病気(肺炎、中耳炎、蓄膿症など)の既往歴がある人も、知らないうちに除菌されている場合もあるので注意が必要です。抗ピロリ菌抗体産生の低下した状態(ステロイド薬を服用している人、免疫能の低下した状態)も注意か必要です。また、「おくすり手帳」を持っている人は、検(健)診時に持参して医師に確認してもらうことをお勧めします。A群でも一度は内視鏡検査を実施し、画像所見でピロリ感染の有無や既往・胃粘膜萎縮を判断するとよいでしょう。

胃がんリスク層別化検査は、服薬の影響を受けますか?

市販されている一般の胃腸薬による影響は受けません。医療機関で処方されるPPI(プロトンポンプ阻害薬;タケプロン、オメプラール、パリエット、ネキシウム)およびタケキャブなどには影響を受けるので、服用している場合は胃がんリスク層別化検査の対象外です。PPIは服用中止後6~12か月でも、影響があるという報告もあります。胃がんリスク層別化検査では、休薬2か月以上が望ましいでしょう。 集団検診では、PPIの服用状況などを必ず問診で確認し、服用中、もしくは休薬から2か月未満の数値に関しては参考値として、再検の機会を設けることがあります。ただし、PPI服用歴などがあり、上部消化管疾患の管理下にある場合は、処方医と相談するという対応で、胃がんリスク層別化検査の対象からはずしてもよいと思います。

A群の「1年間の胃がん発生予測」は「ほぼゼロ」とされていますが、がんが発生する例もありますか。

胃がんリスク層別化検査を長期観察している対象集団では、ほぼゼロといえます。これは、若年の段階で検査して分類を行っているため偽陰性が少ないこと、除菌歴などの問診がしっかり行われていることが要因です。しかし、これがすべての検診現場に当てはまるわけではなく、高齢になってから胃がんリスク層別化検査を行った場合には偽陰性が増えますし、不十分な問診で除菌歴のあるものがA群に入ってしまうことも少なくありません。胃がんリスク層別化検査が理想的に行われた場合、と解釈してください。しかし、噴門部胃がんなど、ピロリ菌感染を背景にしない胃がんも少ないながら存在するので、どれほど条件を厳しくしてもA群からの胃がんを完全にゼロにすることはできません。広島大学病院3161例の胃がんのうち21例、1%未満は、どのような検査を行ってもピロリ菌感染との関連がなかった、と報告されています。

胃がんリスク層別化検査を受けたら、バリウム検査は受けなくてもよいですか?

胃がんリスク層別化検査で、リスクの低いA群と診断された場合は、将来胃がんになる可能性はゼロではないですがきわめて低いので、バリウム胃がん検診を受けるメリットは少ないでしょう。B群、C群、D群と診断された場合は、胃内視鏡検査後、ピロリ菌を除菌してください。内視鏡検査、除菌療法とも、保険診療になります。除菌後は、検診ではなく診療として定期的に内視鏡検査しましょう。

胃がんリスク層別化検査でピロリ菌陽性の場合、保険診療で除菌療法をできますか?

はい、2013年2月の保険改訂で、内視鏡で確認されたピロリ菌感染胃炎に対する除菌療法が保険適用になり、内視鏡検査を行った上でのB群、C群に対するピロリ菌除菌療法は保険診療になります。D群は血清ピロリ菌IgG抗体価が陰性の群ですが、血清ピロリ菌IgG抗体価の感度は100%ではなく、感染があるのに、加齢で抗体価が低下し陰性化している例があります。D群でも胃内視鏡検査でピロリ菌感染胃炎の診断がつき、尿素呼気テストや便中抗原で陽性反応が確認されれば、除菌療法は保険適用になります。なお、保険請求の症状詳記には、「1)内視鏡にて胃炎の診断がなされたこと 2)検診でピロリ菌感染が診断されていること」を記載してください。

D群もピロリ菌の除菌が必要とありますが、D群ではピロリ菌はすでにいなくなったのに除菌が必要ですか?

はい。D群は、血清ピロリ菌IgG抗体価が陰性の群ですが、血清ピロリ菌IgG抗体価の感度は100%ではなく、感染があるのに加齢で抗体価が低下し陰性化している例があります。D群は、内視鏡検査でピロリ菌感染胃炎の診断がついた場合には、ピロリ菌IgG抗体検査以外の検査(尿素呼気試験、便中抗原)を追加実施し、陽性であればピロリ菌現感染として除菌療法を行ってください。

ピロリ菌除菌療法で除菌できなかった場合の対応は?

一次除菌で失敗した人には、二次除菌(保険診療です)を勧めます。二次除菌失敗の人には、三次除菌(自費扱いとなります)を受けるかどうか相談してください。

ピロリ菌除菌療法で、再除菌が必要となる割合を教えてください。

一次除菌では約5~10%が再(二次)除菌となりますが、二次除菌後の再(三次)除菌必要の割合は約5~10%です。

ペニシリンにアレルギーがある場合のピロリ菌除菌療法について教えてください。

ペニシリンアレルギーがある場合の除菌治療は、自費(保険外診療)になります。ピロリ菌専門外来の受診を勧めてください。

ピロリ菌除菌後の胃がんリスクはどのくらい残りますか。

約500人に1人の割合との報告があります。また、一般に、除菌後の胃がんリスクは、ほぼ3分の2に減少すると考えられています。

胃がんリスク層別化検査は、LG21ヨーグルトの長期摂取の影響を受けますか?

影響なしと考えられます。除菌療法の際、除菌3週前から除菌終了までの4週間、LG21ヨーグルトを1日2個摂取したら、除菌率が上昇したという報告がありますが、LG21の摂取だけでピロリ菌除菌はできません。ペプシノゲン値も、LG21摂取で軽度の改善はありますが、胃がんリスク層別化検査の判定に影響が出るほどではありません。「影響なし」と考えてよいでしょう。

胃がんリスク層別化検査『D群』で胃内視鏡検査を実施したところ、医師に「胃はきれい、ピロリ菌に感染した痕跡は見えない。」と言われたケースがありました。フォローアップは、『A群』として扱ってもよいですか?

念のため、ピロリ菌IgG抗体検査以外の検査(尿素呼気試験、便中抗原)を実施し、陰性であれば、内視鏡所見を優先してA群という扱いでよいと考えられます。胃内視鏡検査を実施した医師から説明してもらうとよいでしょう。

血清ピロリ菌抗体測定用検査キットのわが国での上市状況はどうなっていますか?

血清ピロリ菌抗体陽測定検査キットは、現在では3社(栄研化学(株)、富士フィルム和光純薬(株)、および、デンカ生研(株))からEIA法とラテックス法がそれぞれ上市されており、6種類の検査キットが使用可能です。

どの測定キットを使うべきですか?

最近までは、EIA法(測定時間70分、専用の測定機器が必要)が主流でした。しかし、現在では、ラテックス法(測定時間10分、汎用機器で他検査項目と同時に測定可能で簡便であり、安価でもある)が普及し、主流となっています。当NPOでは、これまでは、EIA法であるEプレート❛栄研❜H.ピロリ抗体Ⅱを推奨し、ラテックス法使用の是非は不明としてきましたが、当NPO法人を中心とした高崎市医師会、がん研有明病院検診センター、亀田総合病院検診センター、日本健康増進財団検診センター、および、青山内科クリニック(胃大腸内視鏡/IBD)などの検討結果、そして、ヘリコバクター学会「胃がんリスク評価に資する抗体法適正化委員会」の報告などもあり、総合的に判断した結果、令和元年(2019年)6月より、富士フィルム和光純薬(株)のラテックス法Lタイプワコー H.ピロリ抗体(添付文書基準値:4)、デンカ生研(株)のJ.H.ピロリーラテックス「生研」(添付文書基準値:10)の2種に関しては、使用でき、これを推奨することにしました(Gastro-Health Now 58号を参照)。 今後は、検(健)診などで、リスク層別化検査として使用する場合は、6種類のキットがある中で、EIA法なのかラテックス法なのか、3社のどのキットなのか、確認が必要です。(残念ながら、現在、検査会社に外注した場合、検査結果に使用キット名は掲載されておりません)

血清胃がんリスク層別化検査でのピロリ菌検査は、便中ピロリ菌検査(ピロリ菌抗原)あるいは尿素呼気試験への変更は可能ですか?

血清胃がんリスク層別化検査は、採血だけで簡便に胃がんリスクをスクリーニングするマススクリーニングの手法であり、血清ペプシノゲン値、血清ピロリ菌IgG値を組み合わせて胃がんリスクを分類するもので、この2つの検査の組み合わせで胃がんリスクの層別化が可能です。血清ピロリ菌抗体検査は、ピロリ菌現感染だけでなく、既感染(無自覚に除菌された症例)もある程度拾い上げることができるので、便中抗原や尿素呼気試験よりもリスク層別化に適しています。従って、ピロリ菌抗体検査を、便中抗原や尿素呼気試験、尿中抗体検査などで代用することはできません。しかし、臨床現場で、血清ピロリ菌IgG抗体値以外のピロリ菌検査、便中抗原や尿素呼気試験、尿中抗体検査でピロリ菌感染を診断し、血清ペプシノゲン値による胃粘膜萎縮を評価したり、内視鏡検査やレントゲン検査で胃粘膜萎縮の状態を直接診断して、胃がんリスクを層別化することは可能です。

胃切除後の胃がんリスク層別化検査について、胃全摘の人には実施しない方が良いですか? また、部分切除の場合は、参考値として実施しても良いですか?

胃切除の人のペプシノゲン値は、胃粘膜萎縮を反映しません。胃がんリスク層別化検査の対象外です。しかし、胃がんで、胃切除を受けた人の残胃は、当然、胃がんハイリスクです。ピロリ菌IgG抗体陽性の場合は、残胃にピロリ菌感染が持続している可能性が高いので、残胃からの発がんを予防するために、除菌療法を受けた方が良いと思います。また、ピロリ菌IgG抗体陰性でも、尿素呼気試験か、便中抗原検査を追加実施し、厳密にピロリ菌感染診断を行うべきです。それらが陽性であれば、残胃にピロリ菌感染が持続しているので、残胃からの発がんを予防するために除菌療法を受ける方が良いと思います。

以前、B判定だった受診者が、再度検査した際にA判定となった場合、いずれの判定を優先させるべきですか?

ピロリ菌除菌後以外でも、自然除菌や感冒等での抗生剤使用、加齢による抗体価の低下など、また、判定基準値の前後では、胃がんリスク層別化検査の判定の変動があり得ます。胃がんリスクとなるピロリ菌感染、および、感染既往の有無を確認して、生涯の胃の検査方針を決定するのが胃がんリスク層別化検査の目的です。一度でも、有リスク(B群、C群、D群)と診断された人は、その後の判定によらず、胃がん有リスク群判定が優先されます。