ピロリ菌除菌成功後に軽度から重度の胃粘膜萎縮や組織学的腸上皮化生を伴う患者では、除菌後も胃がんを発症するリスクがあり、…高齢者においては、10年以上にわたって胃内視鏡検査によるフォローアップが必要とされている。…2021年にDigestive Diseases and Sciencesから発表した研究成果を基に、ピロリ菌除菌成功後の胃内視鏡検査での費用効果分析の結果について紹介した…1年に1回の胃内視鏡検査、2年に1回の胃内視鏡検査と胃内視鏡検査を行わない場合の3つの戦略で、マルコフモデルによる決定樹を構築した。対象は、ピロリ菌除菌に成功した50歳の患者の仮想コホートとし、評価指標は、費用、生活の質を考慮した生存年数(QALYs)、生活の質を考慮しない生存年数(LYs)、増分費用効果比である。…結果、基準分析では、2年に1回の胃内視鏡検査、増分費用効果比、胃内視鏡検査を行わない場合、胃内視鏡検査は胃内視鏡検査を行わない場合よりも費用対効果が高かった。確率的感度分析で、胃粘膜の重症度別のシナリオ分析を追加し検討した結果、軽度から中等度胃粘膜萎縮の患者では、2年に1回の胃内視鏡検査が99.9%で費用対効果的に最も優れており、重度胃粘膜萎縮の患者では、1年に1回の胃内視鏡検査が98.4%で費用対効果的に最も優れていた。…ピロリ菌除菌成功後の患者における胃がんを早期に確実に発見するためには、胃がんサーベイランスシステムを構築し、胃粘膜萎縮の重症度や胃がん発症率を考慮したリスク管理による精度の高い胃内視鏡検査による検診体制の確立が早急に望まれている。