近年では、腹腔鏡下胃切除術がより低侵襲な外科切除術の方法として普及しています。胃がんの深達度が粘膜下層から筋層までに留まりリンパ節転移がないと想定されるステージの胃がん(cStageⅠ)では、大規 模ランダム化比較試験において開腹幽門側胃切除術(ODG)に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術(LADG)の生存における非劣性が検証されています。この結 果、cStageⅠの胃がんに対するLADGは標準治療とみなされています。…胃がんに対するロボット支援下手術は2018年度に 保険収載されました。多関節鉗子により鉗子可動域の自由度が上がったこと、術者の手ブレがコントロールされることなどからより高度な手術が実施可能と期待されていますが、胃がん手術における有用性は現在JCOG1907試験で検証中ですので、ガイドライン上は「cStageⅠ胃がんについては弱く推奨」にとどまっています。…切除不能進行・再発胃がんに対しては化学療法が行われます。昨今の化学療法の進歩は著しく、高い腫瘍縮小効果が見込めるようになってきました。最近の化学療法の進歩としては、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害剤の導入があります。胃がん化学療法開始前にはHER2受容体の発現をまずチェックします。HER2陽性胃がんであれば、HER2タンパクに特異的に結合し抗腫瘍効果を発揮するトラスツズマブを含んだレジメンが推奨されます。…本庶佑先生のノーベル賞受賞で話題になった…胃がんの一次治療におけるニボルマブの有効性を示した研究結果を受け、2021年11月、治癒切除不能な進行・再発胃がんに免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブと化学療法の併用療法が承認され、胃がん治療ガイドライン委員会からも「推奨」の速報が出されました。現時点では、HER2陰性胃がんであれば一次治療としてニボルマブと化学療法の併用が推奨されるようになっています。