近年では内視鏡診断を支援するAIの研究が進み、検出・鑑別の機能が実装のフェーズに移行しつつあります。…”内視鏡医療の現場における2つの課題を解決したい”という思いが発端でした。1つ目は、「胃癌の見逃しリスク」です。内視鏡検査において早期胃癌の4.6~25.8%が見逃されていると言われており、診断が難しい早期胃癌は見逃しのリスクがあります。2つ目は、「対策型胃がん検診での二次読影時の内視鏡医の負担増加」です。…2018年にHirasawaらが世界初の内視鏡静止画像における胃癌検出AIを報告しました。…T1b以深の癌は全て検出され、また6mm以上の病変については感度98.6%であり、胃癌検出におけるAIの有用性が示唆されました。2019年にIshiokaらが前出のAIモデルを用いて、世界初の内視鏡動画における胃癌検出AIを報告しました。…感度は94.1%であり、静止画と同様の高い検出能を示しました。病変の癌・非癌を鑑別するAIの研究も行われています。HoriuchiらはNBI拡大内視鏡を用いた胃癌鑑別AIの性能を…比較検討したところ、感度87.4%で、専門医と同等であることを報告しました。…胃癌の深達度診断におけるAIの有用性も報告されています。Nagaoらは…構築したAIを用いて検証用画像における癌の深達度診断能を検討したところ、M-SM1とSM2以深の鑑別精度は白色光で94.5%、NBI画像で94.3%、色素内視鏡画像で95.5%でした。…2021年8月に「胃癌鑑別診断支援AI」のPMDAへの薬事承認申請を終え、継続審議中です。…内視鏡AIは患者・医師双方にとって、従来の内視鏡検査と変わらない手順で、癌の見逃し低減と読影作業負荷軽減を実現できる画期的なツールです。日本の内視鏡医の英知を結集した内視鏡AIが、世界の内視鏡医療の発展に寄与することが期待されます。