本邦における非乳頭部十二指腸癌の多くは局所にとどまる状態で発見されており、またその約半数において内視鏡治療が行われている。…表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)を腺腫あるいは粘膜下層(SM)までにとどまる腺癌と定義し、孤発性のSNADETの内視鏡治療について述べる。…十二指腸SM癌は5-42%のリンパ節転移頻度が報告されている。そのため十二指腸SM癌では、リンパ節郭清を伴う外科切除が必要である。手術による合併症や術後のQuality of Lifeを考慮すると、転移のリスクのない粘膜内癌あるいは前癌病変である十二指腸腺腫に対して、局所的な治療を行うことは合理的であり、腺腫・粘膜内癌が内視鏡治療の対象となる。十二指腸腺腫は5mm以下であれば増大速度が緩徐であり経過観察も許容される。一方、発見時に高異型度腺腫と診断された病変や腫瘍径が20mmを超える病変は…積極的な切除が望ましい。…十二指腸は壁が薄く、屈曲しており、胆汁・膵液などの暴露があるなどの解剖学的な特徴から、内視鏡治療の難易度および偶発症の頻度が高い。また、腫瘍サイズが大きくなるほど偶発症の頻度も高くなる…通電を伴わないCold snare polypectomy(CSP)は、その簡便性や偶発症リスクの低さから径10mmまでの内視鏡的に低異型度腺腫と診断される病変が良い適応である。…腫瘍径が20mm程度までの高異型度腺腫・粘膜内癌が疑われる病変では、EMRまたはUEMRを選択する。…腫瘍径が20mmを超える、あるいはEMR/UEMRで切除困難な病変では、ESDやLECSが選択される。…十二指腸病変に対する内視鏡治療法の選択においてスタンダードはまだなく、各施設の実情に合わせて治療が選択されているのが現状である。それぞれの治療のメリット・デメリット、技術的困難度を考慮し、対応が難しいと判断した場合にはhigh volume centerへの紹介を検討する必要がある。