池田病院附属健康管理センターでは、年間1万件の院内検診、年間5,000件の人間ドックなどを行っている。上部消化管検査はスクリーニング目的の経鼻内視鏡が中心で、昨年(2023年)には9,900件実施した。一方、同センターでの内視鏡検査医師は、非常勤も合わせ1 〜2人/日。検査医は1日当たり30〜50件の内視鏡検査を実施しており、大変負担が大きい。そこで2023年、富士フイルム社製内視鏡 AI 画像診断支援技術 “CAD EYE”を導入し、胃がん・食道がんの早期発見のために活用している。“CAD EYE”が搭載する機能の1つに、「ランドマークフォトチェッカー」がある。食道胃接合部・噴門部・胃角などが撮影されるとモニター画面のランドマークマップに印が付き、既に観察された部位が明確になり網羅性を維持できる。この機能により、胃内では見落とし箇所のない検査が可能となる。後日、判定会などでのダブルチェックにおいて適正な検査との評価が得られやすい。また、「検出支援モード」では、AIにより食道がん・胃がんなどが疑われる病変が検出されるとリアルタイムでモニター画面に検出ボックスが表示される。医師は1つのモニター内で情報を確認でき、受診者も目の前の専用モニターを見ながら医師の説明を聞くことができる。当院では、導入後、この検出支援モードにてAIが指摘した、早期癌症例を経験した。 症例は、73才男性、検診目的の経鼻内視鏡検査。胃粘膜の背景はピロリ菌除菌後の高度萎縮粘膜であり内視鏡診断が困難な症例であったが、AIによる指摘を受け、幽門前庭部小弯のわずかな陥凹性病変を検査医師が確認、微細な病変の構造異常とDLからがんを疑い生検、がんの診断を得たため、静岡がんセンターにてESD治療が可能であった。… 我々は、当院のようなスクリーニング目的の内視鏡検査を主とする検診センターには、AI 診断支援技術を用いた内視鏡スクリーニング検査が大変有用であると考えている。…当院のスクリーニング内視鏡では、疲れを知らないAIと専門医の二人三脚で毎検査を完遂しているイメージである。内視鏡医がAI 診断支援技術に頼りきってはいけないが、診断のサポートとしての使用が丁度よいと考える。…今後、消化器内視鏡を行う検診センターに、AI 診断支援技術を用いた内視鏡スクリーニング検査がますます広まっていくことが望ましいと考えている。