コホート状態遷移モデルを構築し、5つの戦略、①ピロリ菌除菌戦略(20歳以上にピロリ菌除菌治療を実施し、50歳以上ではさらにピロリ菌除菌後の胃がんの早期発見のための毎年1回のフォロー内視鏡検査を追加する)、②50歳以上に対して毎年1回の内視鏡検診、③50歳以上に対して2年に1回の内視鏡検診(現行)、④50歳以上に対して3年に1回の内視鏡検診、⑤検診なしについて、医療費支払者の立場から生涯にわたる期間について分析しました。対象は、20歳・30歳・40歳・50歳・60歳・70歳・80歳とし、年齢別のピロリ菌感染率についても考慮しました。…ベースケース分析の結果では、ピロリ菌除菌戦略は、すべての年齢において内視鏡検診と比較して、費用を最も小さく、生存年数を最も大きくしました。…確率的感度分析の結果では、すべての年齢において、支払い意思額が5万ドル/QALY(quality-adjusted lifeyears)と10万ドル/QALYの両方で、ピロリ菌除菌戦略の費用対効果が高くなる確率は100%となり、ピロリ菌除菌戦略の費用対効果が最も高いという結果が強固であることがわかりました。生涯蓄積効果では、ピロリ菌除菌戦略は、現行の隔年の内視鏡検診と比較して、医療費を2.7兆円削減し、生存年数を3,716万QALYs延長し、胃がん患者の発生を447万人、胃がんによる死亡者を32万人未然に防ぐことがわかりました。…胃がんの一次予防であるピロリ菌除菌戦略は、内視鏡検診よりも費用対効果が高く、医療費を削減し、胃がん発症予防効果により胃がん罹患数・死亡数をともに減少させることが予測されます。日本の胃がん対策において、ピロリ菌除菌戦略は、現行の内視鏡検診に代わって強く推奨されます。