自己免疫性胃炎診断に不可欠な、抗壁細胞抗体測定系について新規測定系を開発しましたので、ご紹介いたします。自己免疫性胃炎(AIG)はわが国において決して稀な疾患ではなく、上部消化管診療においてAIGを正確に診断することは必須となっています。AIGの診断基準は2023年に日本消化器内視鏡学会附置研究会(代表、鎌田智有先生)により策定、公開されましが、従来の蛍光抗体法(FA法)を用いた抗壁細胞抗体価(APCA)測定は精度が低く、臨床的に問題となっています。そこで広島大学、川崎医科大学、藤枝市立総合病院、加古川中央市民病院、富士フイルム(株)、富士フイルム和光純薬(株)からなる多施設研究組織により、新たなヒト由来抗原を用いたラテックス比濁法(LA法)が開発されました。測定対象検体は、国内の研究参加施設から提供されたAIG症例(127例、男性49例、平均年齢65.9歳)および対照症例(129例、男性81例、平均年齢66.1歳)の血清です。全血清中のAPCAはFA法およびLA法を用いて測定しました。その結果、FA法を用いたAIGの診断能は、感度99.2%、特異度41.1%、全体一致率69.9%であり、これまでの報告どおり特異度は低値でした。一方、新しいLA法では、感度93.7%、特異度95.4%、全体一致率94.5%と良好な診断能が得られました。さらに新しいLA法では、生化学自動分析装置を用いた短時間測定が可能であり、効率的なAPCA測定を行うことができると期待されています。この測定キットは年内に認定検査試薬として発売することを目指しており、本測定キットが臨床で広く使用され、AIGが客観的かつ正確に診断されることを期待します。