ヘリコバクター・ピロリの感染率が減少している。しかし、胃癌による死亡者数は男女ともに相変わらず高いままで推移している。高齢化が進み、団塊の世代が60歳を越えるにつれて、この世代からの胃癌発症が増加してきている。すなわち、幼少期に感染したヘリコバクター・ピロリが胃粘膜に炎症を起こし続けて、50-60年経った時期に胃癌を発症しはじめると考えると理解しやすい。ヘリコバクター・ピロリに感染するとほとんどの場合、自然に除菌されることはなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病変を発症させない場合でも、慢性活動性胃炎は持続し、萎縮性胃炎、腸上皮化生を含めた胃癌発生母地を形成する。加えて、明らかな萎縮性胃炎が出現していない若年者に、スキルス胃癌を発生させる「リンパ濾胞性胃炎」、いわゆる鳥肌胃炎が注目されるようになってきた。