ピロリ感染胃炎の除菌が保険適用になってから8年で約1000万人が除菌されたことにより胃がん死亡者数は…2012年と比較すると15.3%もの胃がん死亡者数の減少を示している。…しかし…80代以降の胃がん死亡者数は増加し続けている…日本では80代以上が総人口の9%を占めてきているので、全がん患者死亡者数の約半数が80代以上になってきたことになる。…わが国の80歳代以降の胃がん検診受診率は平均の1/3以下である。80歳代以降のピロリ菌の除菌はそれ以前の世代に比して1/4以下である。さらに除菌による胃がん抑制効果も30%以下と他の年代より明らかに低い。このような状況を総合的に判断すると超高齢者の胃がん予防はきわめて難しいと考えられる。…単純に計算すると保険の通った2013年から2020年までに約3.7万人もの胃がんで亡くなる人を救ったことになる…わが国のピロリ菌除菌による胃がん撲滅を目指す取り組みに関しては、IARCを始め世界中から評価されるようになってきた。然るに日本政府はこのような動きをほとんど理解していない。…胃がん撲滅にはさらに多くの努力が必要である。ピロリ菌感染者は…すべての人が除菌治療の対象になる。除菌できたことをきっちり確認し、以後は内視鏡による経過観察を続ければ、慢性胃炎が将来、胃がんに進行するリスクを減らせるだけでなく、内視鏡検査で早期胃がんを発見し、完治できるチャンスが増えていくのである。…超高齢者の胃がんの予防はきわめて困難であることが明らかになった。現在、80歳以上の超高齢者では、約22000人が胃がんで亡くなっているからである。…。超高齢者をがんから救う一工夫をがん研究者の総力を挙げて考えなければいけない時期に入ってきたと思われる。