NBI併用拡大内視鏡診断は専用スコープと内視鏡医の技量が必要で、現在でも診断の基本は白色光観察による診断法です。1.拾い上げ:わずかな色調変化と境界のある陥凹や隆起に気が付かなければなりません。非噴門部胃癌の99%がH. pylori 既感染の背景胃粘膜から発生しますが、このような胃粘膜は全体に発赤調である上に、萎縮性胃炎
や腸上皮化生による凹凸不整があるため、早期胃癌のわずかな色調変化や隆起・陥凹に気付くことは困難です。胃癌高リスクの背景胃粘膜は萎縮性胃炎や腸上皮化生、鳥肌胃炎、黄色腫です。問診でH.pylori 感染や除菌歴を確認し、高リスクの胃粘膜所見があれば、胃癌があるかもしれないという心構えで検査をすることが重要です。検査の準備や環境を整えることも忘れてはいけません。…また、内視鏡切除例の同時多発性胃癌は4.8~16.5%と言われており、検査中に胃癌に気が付いても、全体をまず観察することが重要です。2.質的診断(腫瘍性・非腫瘍性病変の鑑別)・範囲診断:NBI併用拡大内視鏡診断が有用ですが、日本医科大学貝瀬満先生らは、白色光観察である程度診断することが可能と報告されています。白色光観察で早期胃癌を疑う病変中、NBI非拡大観察で①唐茶色の病変は腫瘍性病変が23%、非腫瘍性病変が77%、②利休色の病変はすべて非腫瘍性病変でした。非拡大NBI観察はどの内視鏡スコープでも使用できるため、唐茶色であれば生検するとよいでしょう。また、今後は研究開発中のAI診断も日常臨床で使用できる時代になることでしょう。酢酸インジゴカルミン染色法による範囲診断は簡便で有用です。3.深達度診断:基本は硬さや病変周囲の襞の性状による従来の診断法で行っています。超音波内視鏡診断(EUS)による早期胃癌の正診率は深達度M/SM1の感度は98%と良好ですが、特異度は69%と低いことが問題点です。…自然開口向け内視鏡用視野確保ゲル、ビスコクリア®を用いた…探索的研究で…従来のEUSによる低い特異度を改善できる可能性があると考えています。