内視鏡検診による胃がんスクリーニングが胃がん死亡抑制に役立つという報告も近年されてきている。本邦においてはH. pylori 菌感染率は若年者ほど低くなっており、一律内視鏡検査を行うのはコスト面と安全面から最適な方法とは言えず胃がん発症リスクに応じて内視鏡検査の適応を決めるべきと考える。胃がんリスク層別化法としてH. pylori 抗体検査と血清ペプシノゲン(PG)検査を組み合わせた胃がんリスク層別化検診(ABC法)が提唱されており、コスト低減に役立つことなどが報告されているがピロリ菌感染率が低下している現在における有用性については報告されていない。…同意が得られた20,773人のうち条件を満たした19,343人について解析を行った。ABC法により層別化を行ったところA群は11,717例、B群は4,452例、C群は2,098例、D群は66例、E群は1,010例であった。2010年の研究開始時点でA群では3例、B群では8例、C群では6例、D群では1例、E群では0例の胃がんを認めた。10年間のフォローアップにより、A群からは9例、B群からは28例、C群からは43例、D群からは1例、E群からは3例の胃がんを認めた。…胃がん発症率と有意な相関を認めた因子としては、 単変量解析においては50歳以上、男性、ALP高値、 PGII高値、PGI/II低下、PG法陽性、H. pylori 抗体陽 性、ABC法、喫煙習慣があった。これらについてCox Hazard解析を行うと、50歳以上、ABC法、現在喫煙 者が有意な胃がん発症リスク因子であった。…結語 2010年代においてもABC法による胃がんリスク層別化ができることが判明した。