厚生労働省「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」(2019年6月)において、画像診断支援領域は、健康・医療・介護・福祉分野においてAIの開発・利活用が期待できる領域の一つとして位置づけられている。さらに、内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局が公表する「AI戦略2022」(2022年4月)においては、画像認識、自然言語処理等でのAIの社会実装による産業・社会の基盤作りの必要性が強調され、「日本が強みを有する分野とAIの融合」が一つの目標に掲げられている。…内視鏡AIの研究開発・人材育成・社会実装は、国家戦略の一つとして本邦で推し進められるべき課題と言える。…特別講演をされたAIメディカルサービスのCEO 多田智裕氏は、いち早く内視鏡画像診断支援AIの必要性・重要性を説いた医師・医学研究者の一人であり、早期胃癌発見AIの開発を皮切りに、社会実装を目指した数々の内視鏡AI開発研究を展開している。…同社の出資により、東京大学消化器内科が協力講座となり、①内視鏡AIにより内視鏡診断における質の向上を目指す、②内視鏡AIの社会実装における課題を抽出し解決する、③内視鏡AIを活用できる人材を育成する、④実臨床の経験に基づいて、次世代の内視鏡診断・治療法を確立することを目的に、2023年1月から東京大学社会連携講座「次世代内視鏡開発講座」が設立され…産学連携により内視鏡AIの研究開発・人材育成・社会実装を加速することが期待されている。…日本消化器内視鏡学会では、日本の内視鏡診療の実態を把握するための世界最大の内視鏡診療データベースの構築、標準化された高度な臨床研究の実現のための臨床研究レジストリーのデータ化、専門医制度への効果的な対応のための医師の診療実績の精確な把握を目的に、JED projectを開始しており、今後は画像診断支援AIのみならず、画像と臨床情報融合、さらにはゲノム、エピゲノム、腸内細菌叢等の情報融合による、がん検診や各種疾患リスク・治療効果予測AIの開発が期待される。