本邦における非乳頭部十二指腸癌の粗罹患率は…欧米と比較しかなり頻度が高い。…2021年7月には十二指腸癌診療ガイドラインが作成され、診断・治療における一定の指針が示された。十二指腸癌の取り扱い規約が2023年1月の時点で存在せず、早期癌の定義がない…表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)を腺腫あるいは粘膜下層(SM)までにとどまる腺癌と定義し、孤発性のSNADETの診断について…非腫瘍と腫瘍の鑑別:十二指腸では十二指腸炎、腺窩上皮化生、異所性胃粘膜、ブルンネル腺過形成、など様々な非腫瘍性病変がみられる。これらは、部位や個数、表面構造、領域性の有無などの所見によりある程度鑑別可能である。白色光(WLI)によりSNADETを疑う所見としては、色調や粘膜模様が周囲粘膜と異なり、かつ領域性があることが重要である。…十二指腸でしばしば観察される絨毛の白色化(WOS)は、上皮内の脂肪滴であることが知られている。健常十二指腸粘膜や炎症・過形成性変化でもみられるが、腫瘍化に伴い脂肪の吸収やリンパ管への移行が障害され…WOSの見え方に違いを生じ、腫瘍・非腫瘍との鑑別や粘液形質・異型度予測に役立つ…低異型度腺腫(LGA)と高異型度腺腫(HGA)/癌の鑑別:WLIでは、形態…、分葉の有無や不均一性、色調、絨毛の白色化および病変径が重要である。表面平滑あるいは均一な分葉を有する白色隆起はLGAであることが多く、陥凹や発赤を有するもの、瑞々しさがなく不均一な凹凸を有する病変、腫瘍径が10mm以上で発赤主体の病変はHGA/癌である可能性が高い。…SNADETにおける生検の正診率は7割程度であるが、WLIやIEEなどの内視鏡診断による正診率は、生検診断と同等以上である…球部におけるIs型腫瘍や粘膜下腫瘍様隆起を呈する病変では、ブルンネル腺過形成との鑑別が困難で、まれにSM癌があることから、生検や超音波内視鏡を含めた総合診断をするべきである。