消化管内視鏡検査の歴史を振り返ると、1950年代に胃カメラの撮影手技が確立され、実用化された。…1985年に先端にCCDを備えたビデオスコープが発明され、内視鏡画像は電気信号に変換されモニターに表示されるようになった。…1990年代初頭に開発された内視鏡画像のファイリングシステムは、21世紀には瞬く間に普及した。全ての内視鏡画像がコンピューターに保存され、いつでもどこでも呼び出すことができるようになった。…現在、さまざまなモデルやシミュレーターが開発され、ハンズオントレーニングやライブデモンストレーション、動画配信教育が普及している。…国内外の内視鏡学会では専門医の資格を得るためにいくつかの条件を要求している。基本学会の認定医に加え、一定期間の認定機関でのトレーニングや一定数の症例経験が求められ、専門医として適切な知識を持っていることを確認するために、コンピューターベースの試験が行われる。…近年、内視鏡分野において、人工知能(AI)を活用した品質管理が実用化されてきている。内視鏡時に見落とされた胃領域を監視できるAIシステムが開発され、前向き研究では、内視鏡観察による死角が15%減少した。胃がん検出のためのAI研究は数多くあり、AIは専門医よりも高感度・高精度で胃がんを検出し、診断に要する時間も大幅に短い。内視鏡治療のトレーニングに関しても、高価格で限られた施設でしか購入できないものから、低コストで環境に優しいモデルなど様々なものが開発されている。近い将来、内視鏡診療において、AIは不可欠なパートナーとなることが予想される。医学生・初心者の早期トレーニング、内視鏡検査の質の向上と診断支援、治療の現場では高速大容量の通信技術と組み合わせて遠隔医療による地方の医療格差の軽減などが可能となる。我々内視鏡医は、日々技術をみがき知識を更新し続けなければならないが、AIをうまく活用することにより効率的により良い内視鏡診療と教育を実現できるものと考える。