日本人成人における生年別の正常胃粘膜(健常胃)の割合:茨城県メディカルセンターにおける人間ドックはその殆どを上部消化管造影検査によりスクリーニング検査を実施している。2007年度から要内視鏡検査の判定と合わせ背景胃粘膜診断を行い受診者に通知している。2007-2019年度受診者216,152人のうち、1935年から1985年までの5年毎の生年と1990年以降生まれを一つの生年とした計12のグループを抽出した。14枚の造影X線画像のうち、二重造影法の6枚を背景粘膜の診断に使用した。X線画像による健常胃の胃小区や襞は、炎症や萎縮のある胃粘膜、特に腸上皮化生を伴う胃粘膜とは異なる。その基準に則り、健常胃粘膜とピロリ菌感染に関連した活動性や非活動性の胃炎を診断し、対象を健常胃と胃炎の2群に分けた。X線検査診断後にピロリ菌の抗体検査結果を照合した。X線で胃炎と診断された15,884人は除菌歴の有無に関わらず分析に含め、健常胃と診断された26,073人から除菌歴があった649人は分析から除き、25,424人を健常胃として分析した。12のグループ毎の結果…1935年から1990以降生まれに向けて直線的に健常胃の割合が増加し、胃炎の割合は減少していた。健常胃と診断された対象は、全例ピロリ菌抗体陰性であった。…ピロリ菌未感染の正常胃粘膜(健常胃)の割合が増加していることで考えること…我が国の年齢階級別胃がん罹患率は、1985年から全ての年齢階級で低下している。1985年から2015年までの5年毎の50歳年齢時の健常胃の割合は19.8%か71.2%に増加している。…胃癌の罹患の減少は健常胃と胃炎の割合に大きく関連していると考えられる。年齢区分のみで検診対象者として全員に実施している現在の胃がん検診のあり方は再考が必要である。