私たちは、未来の内視鏡医学を創造するために過去の歴史を振り返る必要があります。…ある日突然新しいことが出現したということはなく、すでに行われた先人の研究を検討して、それに新しい着想と改良工夫を加えて、今日の内視鏡が出来上がっているのです。内視鏡で可能な分野は無限といいても良いでしょう。…1985年以降、電子内視鏡や超音波内視鏡が導入され、その普及による内視鏡診断が進歩して、食道・胃・大腸早期癌のより精緻な内視鏡診断学が構築されていきました。1980年代に主流であった内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、2000年代より、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)へと目覚ましい発展を遂げていきました。内視鏡治療のイノベーションのためには、消化器内視鏡医と外科医の協力並びに産学官・医工連携による長期的視野での研究開発の推進が必要です。そして、エキスパートの人間の技能とロボット技術の融合に加えて、人口知能(AI)と情報系を複合した次世代技術を進化させていくことが重要です。…内視鏡の歴史を振り返ると、それぞれのイノベーションは、最初は個人の情熱から始まる小さな挑戦に過ぎないものでした。その後、患者さんや医療現場に向き合う中で常に技術や医療機器の改良・工夫を重ねて、磨き続けることで、大きなイノベーションにつながってきたものと思います。内視鏡の将来展望を語るうえで、AI内視鏡の導入は大きな意義があります。医師の時間的・労力負担減少、早期消化管癌が自動的・リアルタイムで発見・診断できることで、病変の見逃し減少と診断能向上する。より早く、より容易に、より客観的な質的診断が可能となり、人間の眼で識別できない精緻な診断が可能になる。内視鏡診断の均霑化、指導医不足の地域では、AI導入により効率的な教育効果が得られるようになります。外科手術の時代的変遷は、開腹手術、内視鏡下手術、ロボテック手術、デジタルsurgeryへと進化しています。…現在、内視鏡治療は、LECSで代表されるように内視鏡外科と内視鏡医との協力が不可欠です。近い将来、AI、Io Tを融合したロボテック技術の導入が期待されています。内視鏡医の手技をロボット技術で再現させ、人間の判断すべき状況を客観的にAIにenhanceさせて、内視鏡治療を言語化、数値化することで今後の変革をもたらすことができます。…内視鏡の発展のためには、Multidisciplinary(集合的・複合的)アプローチも必要です。…最後に日本消化器内視鏡学会半世紀の歴史を振り返り、若い先生方に3つのメッセージをお伝えしたいと思います。1つ目は、新たな開発の元はニーズから生まれること、2つ目は内視鏡機器開発・技術革新において、これまでもそうであったように、これからも常に日本が世界をリードし続けること、そのためにKey Technologyの融合(Robotics、AI、Bionicsなど)、産学官の連携が重要です。3つ目は、グローバル化の目
的と意義を見直して世界視点の戦略を立てて進んでいくことです。…、内視鏡先進国、準先進国、新興国を図5に示します。次世代を担う内視鏡医に期待することは、世界と渡り合える視野を磨いていくとともに、技を磨き、仲間を増やし、日本国民のみならず、世界中の人々に最高の内視鏡医療を提供していくことが望まれます。そして、日本を内視鏡医療立国にすることを提案したいと思います。