横須賀市の胃がん検診は、2001年9月まではX線のみであり、受診率は2%前後、胃がん発見率は0.1%前後だった。10月からは血清ペプシノゲン法(以下PG法)か、X線かどちらかを選択できる方式になり、2011年度まで続けられ、受診者の85%はPG法を選択していた。受診率は13%前後、胃がん発見率は0.3%前後であった。2006、2007年度はX線による発見胃がんは0件だった。この事実に危機感を抱いた保健所は、医師会と対策協議を開始した。2008,2009年度の胃がん1件発見するための費用を概算してみると、X線では1,300万〜1,500万円、PG法では25万〜50万円であった。X線は費用対効果が低く、かつ放射線被曝や、読影医減少の問題もあり、十分に議論した後、思い切ってX線を全廃し、2012年3月の市議会で可決後、4月からABC検診を導入することにした。A群は必要に応じて保険診療で上部消化管内視鏡検査(以下EGD)を行い、5年目以降に一度だけ再受診可能とした。BCD群は以後保険診療で、EGD、除菌、経過観察を行い、結果を各医療機関が保健所に連絡することにした。除菌後はE群として、対象外としEGDでの経過観察とした。プロトンポンプ阻害剤、ボノプラザン服用中、胃切除後、腎不全の場合も対象外とした。BCD群の精密検査として施行したEGD画像は、医師会へ提出し、複数の消化器専門医師での二次読影を行った。…10年間の経過…発見胃がん323件のうち、早期がんは239件(74%)であった。ちなみに2007年度から2011年度で発見された胃がんのうち、早期胃がんはPG法で60.8%、X線で1.8%だった。2018年10月に市議会で「横須賀市がん克服条例」が可決されたことを受けて、2019年度から市内在住の中学2年生全員を対象にHP検査・除菌を全額公費負担で行うことになり、保健所、教育委員会、医師会で具体策を検討した。尿ウリネリザで1次検査を行い、陽性者は、医師会が選定した医療機関でUBTか便中HP抗原で確定検査を行った。…また中学2年生から40歳までの途中の約25年間、市民は検査を受ける機会がないことから、これらの穴埋めも考慮し、2023年4月からは対象者を20歳、30歳にも拡げ、本人負担無しで行うこととして、初年度として現在進行中となっている。まとめ:ABC検診は、胃がんのリスクを有する者にEGDを行うものであり、検査効率が良く、EGDへのゲート
ウエイとなり得るものである。また費用対効果もよく、胃がん発見という目的以外にも、HP陽性者に対して除菌を行うので、今後の胃がん発生の減少がより期待され、医療費の抑制にもつながるものと思われる。