ホーム > 重要なお知らせ > 

胃がんリスクフォーラム報告③~大田原市における胃がんリスク検診の導入と運用について

<< 一覧へ戻る

2015年09月10日

 

胃がんリスクフォーラム報告③~大田原市における胃がんリスク検診の導入と運用について

大田原市における胃がんリスク検診の導入と運用について

増山胃腸科クリニック 院長   増山 仁徳
大田原市健康政策課成人健康係長 矢野 弥生
大田原市健康政策課長      岩井 芳朗
大田原市長           津久井 富雄
栃木県保健衛生事業団 医療局長 森久保 寛

増田先生

[はじめに]
大田原市は東京から北へ150㎞、栃木県の北東部に位置する人口75,000人の自然豊かな自治体です(図1)。
当市では平成23年度より40歳以上74歳までの5歳節目年齢対象者に胃がんリスク検診を導入・実施し、今年で5年目となりました。
本日は当市における胃がんリスク検診導入のいきさつ、平成23年度から25年度までの3年間のX線検診とリスク検診の胃がん発見率、胃がん一件当たりの発見費用および二次検診対象者に対する受診勧奨活動の実際についてご紹介いたします。

[胃がんリスク検診 導入のいきさつ]
胃X線検診受診率が32~33%台で横這い、検診受け入れ枠の限界、便秘、誤嚥などのバリウム検診による偶発症の発生等の課題があった中、平成22年7月大田原医師会より胃がんリスク検診推進の提案をさせていただきました。同年9月タイミングよく、大田原市議会で胃がんX線検診の改善についての質問があり、10月の市長協議で平成23年度よりリスク検診計画案の了承推進決定となりました。直ちに先行自治体である高崎市、目黒区のご指導を仰ぎ、その後検診機関である栃木県衛生事業団、市健康政策課および医師会の三者で実施内容検討会を数回行い、平成23年度より実施に至りました。

[平成23年度~25年度 3年間の総括]
胃がんリスク検診を導入した平成23年度から25年度の3年間でX線検診とリスク検診で胃がん発見数を比較すると、X線検診の胃がん発見数は平成23年度、早期7例、進行1例、平成24年度、早期5例、進行0、平成23年度、早期15例、進行1例でした。一方リスク検診は平成23年度、早期8例、進行1例、平成24年度、早期5例、進行3例、平成25年度、早期5例、進行0でした。また、リスク検診ではこの3年間で食道がんが4例、胃マルトリンパ腫が1例発見されています(表1)。
大田原市病変の内訳
次にX線検診とリスク検診とで胃がん発見率、胃がん一件当たりの発見費用を比較しますと、X線検診は一件当たりの費用が4,200円、がん発見率は0.16%、胃がん一件当たりの発見費用は258万円でした。一方、リスク検診は一件当たりの費用が3,200円、がん発見率は0.39%、胃がん一件当たりの発見費用は87万円でした(表2)。要約しますとリスク検診はX線検診と比較し、胃がん発見率は2.4倍、1件当たりの発見費用は1/3でした。

大田原市費用の内訳

[胃がんリスク検診を成功させるための運用の実際]
大田原市は胃がん二次検診者の100%受診を目標に受診者が主体的に健康管理を行えるよう支援しています。具体的には健診結果判定後、①直ちに要精検者(二次検診者)台帳を作成し、至急精検者には訪問指導、②約1ヶ月後に健診結果説明会または結果送付と受診勧奨、③3ヶ月後二次検診未受診者に葉書による受診勧奨、④6ヶ月後、未受診者には電話/訪問で状況確認と受診勧奨を行っています(図2)。
大田原市追跡方法
このように繰り返し受診勧奨を行うことにより、平成23年度から25年度の3年間の二次検診平均受診率は胃X線検診が84.7%、胃リスク検診が82.6%でした。更に本年度から検診機関である栃木県保健衛生事業団が参加した精密検査未受診者推奨モデル事業に相乗りし、要精検者の更なる受診率アップを目指し頑張っています。

[まとめ]
胃がんリスク検診は胃X線検診と比較し、胃がん発見率は2.4倍、1件当たりの発見費用は1/3でした。
また、検診を成功させるには自治体、検診機関、医師会が連携し、結果を共有し、熱意を持って住民の健康に対する意識を高めていくことが重要であると考えられました。

本件に関する問い合わせ先

〒108-0072 東京都港区白金1-17-2 白金タワーテラス棟609号
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構
理事長 三木一正
TEL:03-3448-1077 FAX:03-3448-1078
E-Mail:info@gastro-health-now.org

<< 一覧へ戻る